令和元年7月8日以降に契約した定期保険の支払保険料の会計処理
(保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%超~70%以下、
かつ、年換算保険料相当額が一被保険者につき合計30万円以下のもの)



【令和元年7月8日以降に契約した保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%超~70%以下、かつ、年換算保険料相当額が一被保険者につき合計30万円以下の定期保険の支払保険料の会計処理】




契約者 被保険者 保険金の
受取人
支払保険料の会計処理
法人 役員
使用人
法人 保険料等で期間の経過に応じて損金算入
役員
使用人
(普遍的加入である)
役員
使用人の遺族
福利厚生費等で期間の経過に応じて損金算入
役員
使用人
(普遍的加入でない)
役員
使用人の遺族
被保険者の給与となる

※役員報酬の場合は定期同額給与
法人が自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者として、令和元年7月8日以降に契約した定期保険の内、保険期間が3年以上かつ最高解約返戻率が50%超のものは、保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合に該当し、原則として、法人税法基本通達9-3-5の2の規定に基き支払保険料の一部を資産計上する会計処理を行います。

ただし、保険期間が3年以上かつ最高解約返戻率が50%超であっても、最高解約返戻率が70%以下で、かつ、年換算保険料相当額が一被保険者につき合計30万円以下のものについては、例外的に、法人税法基本通達9-3-5の規定に基づいて、支払保険料を会計処理します。

『年換算保険料相当額』とは、その保険の保険料の総額を保険期間(保険契約に定められている契約日から満期までの期間)の年数で除した金額であり、その事業年度に支払った保険料である『支払保険料総額』で無いことに留意が必要です。

また、被保険者一人当たりに2以上該当する契約が有る場合はその合計額で30万円以下かどうかを判定します。
定期保険における最高解約返戻率の算定方法については、下記のページをご参照ください。
定期保険における最高解約返戻率とは
また、期保険に関する税制の改正履歴と、適用される支払保険料の会計処理の総まとめは、下記のページをご参照ください。
定期保険に関する税制の改正履歴と会計処理の総まとめ
具体的な会計処理は、被保険者となる対象者の範囲と、保険金又は給付金の受取人が誰かにより異なります。
保険金又は給付金の受取人が法人である場合、支払った保険料は、保険料等で期間の経過に応じて損金の額に算入します。
保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合、支払った保険料は、福利厚生費等で期間の経過に応じて損金の額に算入します。

ただし、保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合で、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合は、支払った保険料は、当該役員又は使用人に対する給与となります。

このとき、被保険者が役員で、法人が負担する保険料が毎月おおむね一定である場合は、定期同額給与となります。

特定の役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者とした加入でないことを『普遍的加入』といいます。

普遍的加入の詳細な要件については、下記のページをご参照下さい。
保険契約における普遍的加入とは
【参考文献】
法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2
タックスアンサーNo.5364定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章1Q&A7』一般財団法人大蔵財務協会
【短期払いの場合の各期における支払保険料の損金計上額】

『総支払保険料÷保険期間』で算定した金額。

 例)保険期間40年、
 1年当り20万円を10年間支払

  各期の損金計上額=20万円×10年÷40年=5万円
保険契約における『短期払い』とは、保険料を保険期間よりも短い期間で払い込んでしまうことをいいます。

例えば、終身保障タイプの保険料を有期支払したり、保証期間40年の保険で保険料の支払は10年間で完了する、といったケースがこれに該当します。

このような場合、保険期間と保険料支払期間が対応していないため、時の経過に伴い保険料を損金計上するためには、単純に当期支払保険料ではなく、『総支払保険料÷保険期間』で算定した金額を年間の保険料として損金計上します。 【参考文献】
法人税基本通達9-3-5の2(注)4
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ[Q2]
下記では、令和元年7月8日以降に契約した、保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%超~70%以下、かつ、年換算保険料相当額が一被保険者につき合計30万円以下の定期保険の支払保険料の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は従業員に対して、下記の条件で定期保険を契約した。
・令和2年4月1日に保険契約を開始した
・令和3年3月31日に、令和2年4月1日~令和3年3月31日分の
 保険料100千円を支払った
・一人当たりの年換算保険料相当額は2万円である
・保険期間は10年間である
・最高解約返戻率は60%である
【ケース1:保険金の受取人が法人】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
保険料 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、保険料の勘定科目で費用計上します。
【ケース2:保険金の受取人が被保険者の遺族かつ普遍的加入である】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
福利厚生費 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、福利厚生費の勘定科目で費用計上します。
【ケース3:保険金の受取人が被保険者の遺族かつ普遍的加入でない】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
給与 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、給与の勘定科目で費用計上します。被保険者が役員の場合は、役員報酬の勘定科目を使用します。
次のページでは、令和元年7月8日以降に契約した定期保険の支払保険料の会計処理(保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%超~70%以下、かつ、年換算保険料相当額が一被保険者につき合計30万円超のもの)について具体的にご紹介します。