インボイス制度における売手側が負担する銀行振込手数料の取り扱い

手数料計上科目 インボイス

支払手数料
(消費税区分:課税仕入れ)

買手が振込手数料を立替えたと考え下記の仕訳を計上

≪仕訳≫
(現金預金)XXX (売掛金)XXX
(支払手数料)XXX

⇒支払手数料について下記の
 インボイス対応が必要

①買手が金融機関から受領
 した支払手数料を入手

②買手が作成した支払手数料
 の立替金精算書を入手

【デメリット】
インボイス対応が煩雑

売上のマイナス
(消費税区分:課税売上に対する対価の返還)

手数料を売上値引と考え下記の仕訳を計上

≪仕訳≫
(現金預金)XXX (売掛金)XXX
(売上値引)XXX

⇒原則は値引に関する『適格
 返還請求書』の交付が
 
 必要だが、税込1万円以内
 の値引等については交付が
 
 免除

【デメリット】
売上高の金額に影響してしまう

支払手数料
(消費税区分:課税売上に対する対価の返還)
※実務ではこちらがお勧め!

帳簿上は、買手が振込手数料を立替えたと考え下記の仕訳を計上

≪仕訳≫
(現金預金)XXX (売掛金)XXX
(支払手数料)XXX

⇒支払手数料の消費税区分を
 課税売上に対する対価の
 
 返還を選択することで、
 会計上は支払手数料とし
 
 つつ、消費税の計算上は
 売上値引と取り扱うことが
 
 できる
通常の商習慣では、売上代金等に対する振込手数料は、買手が負担するのが一般的ですが、稀に、売手が負担する契約になっている場合があります。

その場合、売上代金は、買手が銀行に支払った振込手数料を差し引いた残額で振り込まれます。

インボイス制度におけるこのような売手負担の振込手数料の取り扱いは、売手の会計処理における、振込手数料の計上科目、および、消費税区分の組み合わせにより3パターンに分かれます。
1パターン目は、振込手数料を支払手数料で計上し、消費税区分を『課税仕入』とする方法です。

この場合、課税仕入である支払手数料に関して、買手より、銀行支払の際のインボイスを入手しなければなりません。

さらに、入手したインボイスの『交付を受ける者の氏名又は名称』が売手ではなく買手となっているため、買手に『立替金精算書』を作成してもらう必要があるため、手続きが非常に煩雑です。
2パターン目は、振込手数料を売上値引で計上し、消費税区分を『課税売上に対する対価の返還』とすることです。

売上値引き等については、原則として『適格返還請求書』の交付が必要とされていますが、税込1万円未満の値引き等は交付が免除されています。

振込手数料はほとんどが少額であるため、インボイス対応が必要になるケースは稀です。

ただし、この方法では、売上高の金額が変更されてしまうというデメリットがあります。
パターン1とパターン2のデメリットを両方解決する方法が、パターン3の振込手数料を支払手数料で計上し、消費税区分を『課税売上に対する対価の返還』とする方法です。

この方法だと、消費税法上は値引として取り扱われるため、上記の免除規定により、インボイス対応が必要になることがほとんどありません。

そして、手数料は支払手数料に計上されるため、売上金額に影響することもありません。

そのため、実務においてはパターン3を適用することがお勧めされています。
【参考文献】
国税庁HPインボイス制度に関するQ&A問29・問30
詳細については、下記のYoutube動画で紹介されています。
次のページでは、インボイス制度における郵便切手等の取り扱いについて具体的にご紹介します。