開示対象となる関連当事者との取引とは


 
関連当事者との
取引の定義



「関連当事者との取引」とは、会社と関連当事者との取引をいい、対価の有無にかかわらず、資源若しくは債務の移転、又は役務の提供をいう。また、関連当事者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連当事者が当該取引に関して会社に重要な影響を及ぼしているものを含む。
(関連当事者の開示に関する会計基準第5項(1))





『関連当事者との取引』とは、会社と関連当事者との取引を言います。具体的には、資源若しくは債務の移転、又は役務の提供、資本取引等の取引が挙げられます。
(関連当事者の開示に関する会計基準第5項(1)・28項)
ただし、開示の対象となるものは、『関連当事者との取引』の内、重要性のある取引のみに限定されます。
(関連当事者の開示に関する会計基準第6項
関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第12項)
【開示対象となる関連当事者との取引】

会社と関連当事者との取引(資源若しくは債務の移転、役務の提供、資本取引等)の内、重要性のある取引
『関連当事者との取引』には、会社と関連当事者との直接の取引はもちろんのこと、会社と第三者との取引の内、関連当事者が会社に重要な影響を及ぼしているものも含まれます。

同様に、形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合についても、『関連当事者との取引』に含まれます。

また、会社と関連当事者との直接の取引については、その取引を行う目的が第三者のためのものであったとしても、『関連当事者との取引』に含まれます。
(関連当事者の開示に関する会計基準第5項(1)・8・30項)
『関連当事者との取引』に該当するかどうかは、その対価の有無にかかわらず判定されます。

そのため、たとえ無償・低廉の取引であったとしても上記の条件を満たす場合は『関連当事者との取引』に該当します。

このような無償取引や低廉な価格での取引の具体例としては、無利子貸付・低利貸付、寄付などが挙げられます。

無償取引、低廉価格での取引の場合の重要性の判定は、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積り、その金額に基づき判断します。
(関連当事者の開示に関する会計基準第5項(1)・7・29項)
さらに、『関連当事者との取引』に該当する取引は、会社にとって対象者が『関連当事者』である期間に行った取引のみです。

そのため、年度の途中において関連当事者に該当することとなった、又は関連当事者に該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引のみが開示対象となります。
(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第6項)
連結上においては、連結会社と関連当事者との取引が開示対象となるため、連結財務書類作成において相殺消去した取引は、開示対象外となります。
(関連当事者の開示に関する会計基準第6・27項
関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第8項)
ただし、期末に子会社(取得前の期間において関連当事者に該当する)を取得し、貸借対照表のみ連結している場合等は、取得前に行った当期中の取引が連結財務書類上相殺消去されていないため、このような取引については関連当事者との取引の開示対象となります。
(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第6項)
また、連結財務書類上は、連結子会社と関連当事者との間の取引についても、開示対象となります。
(関連当事者の開示に関する会計基準第26項)
しかしながら、関連当事者との取引のうち、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(一般競争入札、預金利息・配当の受取り、公募増資、保険関係取引などで定型的な約款などにより一般顧客に同一の条件で提供する商品等)については、開示の対象外とされています。
(関連当事者の開示に関する会計基準第9項(1)・28・31・32項
関連当事者の開示に関する会計基準の公開草案に対するコメントの公表『取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引』)
また、関連当事者である役員との間で行う取引の内、会社法第361条等で定める役員に対する報酬については、別途、コーポレート・ガバナンスに関する非財務情報として開示が規定されているため、関連当事者との開示の対象外とされています。

ここでいう役員に対する報酬とは、具体的には、役員に対する報酬・賞与その他職務執行の対価として支払われる財産上の利益をのことをいい、金銭以外の経済的利益の供与も含みます。

役員に対するストック・オプションについては、会社法第361条等で定める役員に対する報酬に含まれず、資本取引として関連当事者との取引の開示を行います。

さらに、役員に対する報酬等以外の取引であっても、役員が従業員としての立場で行っていることが明らかな取引については開示対象外となります。

具体的には、使用人兼務役員が会社の福利厚生制度により受ける融資や社宅家賃補助等が挙げられます。
(関連当事者の開示に関する会計基準第9・33項
関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第5・24項
関連当事者の開示に関する会計基準の公開草案に対するコメントの公表『「資本取引」に該当するストック・オプションの開示』・『「役員報酬」の開示対象外の取引』)
また、例えば、関連当事者に該当する関係会社が他の関係当事者と取引を行う場合など、会社が直接関わらない関連当事者同時の取引については、開示対象に含まれません。
(関連当事者の開示に関する会計基準第34項)
関連当社との取引に該当する 関連当社との取引に該当しない

・会社と関連当事者との直接
 の取引
 (取引目的が第三者のため
 のものも含む)

・会社と第三者との取引のう
 ち関連当事者が会社に
 重要な影響を及ぼしている
 取引

・形式/名目的に第三者を経
 由しているが実質上の
 相手先が関連当事者である
 ことが明確である取引

・無償の取引

・低廉な価格での取引

・子会社(取得前関連当事者
 に該当)を取得した場合
 で、
 連結財務書類上未相殺
 の取得前の当期中取引

・連結上における、連結子会
 社と関連当事者の間の
 取引

・役員に対するストック・
 オプション

・期中に関連当事者になった
 ものとの取引の内、
 関連
 当事者になる前の期間の
 取引

・期中に関連当事者ではなく
 なったものとの取引の
 内、関連当事者ではなくな
 った後の取引

・連結上における、連結財務
 書類作成において
 相殺消去
 した取引

・取引条件が一般の取引と同
 様であることが明白な
 取引

・役員に対する報酬、賞与
 及び退職慰労金の支払い
 (会社法第361条等で定める
 報酬等に該当するもの)

・役員が従業員としての立場
 で行っていることが
 明らか
 な取引
 (福利厚生制度により受け
 る融資や社宅家賃補助等)
次のページでは、関連当事者との取引の開示における重要性の判断基準について具体的にご紹介します。