破産更生債権等に対する貸倒見積額の算定

【破産更生債権等とは】

 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥って
 いる債務者に対する債権


【貸倒見積高の算定方法】

 財務内容評価法(個別引当法)

  ≪算定式≫
  貸倒見積高=債権額-担保処分見込額
        -保証による回収見込額


【貸倒見積高の会計処理】

 原則:貸倒引当金に計上
 例外:債権額から直接減額


【未収利息の会計処理】

 計上済未収利息は当期の損失として処理
 し、以降の利息は計上しない
破産更生債権は、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権です。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第27・91項
破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を全額貸倒見積高とします。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第28(3)・92項
劣後債券、劣後受益権及び資産担保型証券のように債権の内容が特殊なものである場合は、その内容に応じて適切な貸倒見積高を算定しなければなりません。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第94項
破産更生債権等の貸倒見積高は、原則として、他の区分の債権と同じように、貸倒引当金として計上します。

ただし例外として、債権金額又は取得価額から直接減額する方法を採用することも認められています。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準(注10)
また、通常は未収利息も、貸倒引当金の引当対象債権に含まれますが、破産更生債権等に対する利息については、未収利息を収益として認識することは適当でないと考えられます。

そのため、既に計上されている未収利息を当期の損失として処理するとともに、それ以後の期間に係る利息を計上してはならないとされています。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第95項・(注9)
下記では、破産更生債権等に対する貸倒見積高の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社の各期末における破産更生債権等の状況は下記の通りである。

・X1年3月31日時点で取引先B社に対する貸付金10,000千円
 を保有している
・X1年3月31日にB社は破産法の適用を受けた
・B社への貸付金に対しては、担保を設定しており、
 担保の処分見込額は3,000千円であった
・B社への貸付金に対しては、C社より2,000千円の債務保証
 を設定している
・B社への貸付金に対する貸倒引当金の既計上額は無い
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
貸倒引当金繰入 5,000千円※1 貸倒引当金 5,000千円※1
※1貸付金残高10,000千円-担保処分見込額3,000千円
 -債務保証額2,000千円
破産更生債権等の期末帳簿価額から、担保の処分見込額と、債務保証により保証されている金額を控除した残額を貸倒見込高として、差額補充法で貸倒引当金を計上します。
次のページでは、同一の相手先に債権と債務を有している場合の貸倒引当金の設定対象(相殺適状)について具体的にご紹介します。