同一の相手先に債権と債務を有している場合の貸倒引当金の設定対象(相殺適状)

【貸倒引当金算定時の相殺適状】

同一の相手先に債権と債務を有している場合、債務額を差引いた債権額が貸倒引当金の設定対象となる
同一の相手先に、債権と債務の両方を有している場合、もしもその債権が貸し倒れても、債務の金額分だけ貸倒損失を免れることができます。

そのため、貸倒引当金の算定の際には、同一の相手先への債務額分を差引いて残った債権額を、貸倒引当金の設定対象とします。
下記では、貸倒引当金における相殺適状の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社のX1年3月31日時点の債権債務の残高及び、貸倒引当金の状況は下記の通り。

・B社に対する債権債務は売掛金10,000千円、
 買掛金5,000千円である
・C社に対する債権債務は売掛金7,000千円、
 買掛金8,000千円である
・A社は期末債権に対して2%の貸倒引当金を設定している
・X1年3月31日時点の貸倒引当金残高はゼロである
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
貸倒引当金繰入 100千円※1 貸倒引当金 100千円※1
※1B社:売掛金10,000千円-買掛金5,000千円=5,000千円
    5,000千円×引当率2%=100千円
 C社:売掛金7,000千円<買掛金8,000千円
    のため引当金の設定対象0千円
 合計:B社分100千円+C社分0千円=100千円
相手先別に、債権と債務の差額を確認し、貸倒引当金の設定対象となる債権額を算定します。
その金額に貸倒引当金の引当率を掛けて算定した金額の合計を、貸倒見積高として、差額補充法で貸倒引当金を計上します。
次のページでは、貸倒引当金の決算における会計処理について具体的にご紹介します。