一般債権に対する貸倒見積額
の算定

【一般債権とは】
 経営状態に重大な問題が生じていない
 債務者に対する債権


【貸倒見積高の算定方法】
 貸倒実績率法(総括引当法)

  ※貸倒見積もり高は、債権全体又は
   同種・同類の債権ごとに算定

  ※算定方法は、適用する貸倒実績率の
   種類によって、下記の2パターンに
   分かれる

  ①期末債権残高をベースにする方法

   貸倒見積高=期末債権残高×貸倒実績率

  ②期末債権の当初発生元本金額をベース
   にする方法

   貸倒見積高=期末債権の当初発生
         元本金額×貸倒実績率
         -貸倒損失既発生額
一般債権は、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権です。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第27・91項
一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定します。 【根拠資料】
企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第28(1)・92項
一般債権の貸倒見積高の算定においては、適用する貸倒実績率の違いにより、2つの方法が存在します。


1つ目は、期末債権残高をベースにする方法です。

この方法においては、期末債権残高をベースに算定した貸倒実績率を適用します。そして、貸倒見積高は、『期末債権残高』に貸倒引当金を掛けて算定します。


2つ目は、期末債権の当初発生元本金額をベースにする方法です。

この方法においては、期末債権の当初発生元本金額をベースに算定した貸倒実績率を適用します。

そして、貸倒見積高は、『期末債権の当初発生元本金額』に貸倒引当金を掛けて、さらにそこから期末債権に対して既に発生済みの貸倒損失額を控除して算定します。
下記では、一般債権に対する貸倒見積高の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社の各期末における一般債権の状況は下記の通りである。

・X1年3月31日末時点で、B社へ5,000千円(当初発生元本
 6,000千円、既発生貸倒損失0千円)、
 C社へ8,800千円
 (当初発生元本9,000千円、既発生貸倒損失100千円)、
 D社へ2,000千円(当初発生元本
 10,000千円、既発生貸倒
 損失0千円)の貸付金を有している
・上記の貸付金は全て一般債権に分類される
・一般債権である貸付金については、過去3年の貸倒実績率
 の平均値を基に、貸倒見積高を算定
 している
・X1年3月31日における過去3年の期末債権残高をベース
 に算定した貸倒実績率の平均値は1%であった
・X1年3月31日における過去3年の期末債権の当初発生元本
 金額をベースに算定した貸倒実績率の
 平均値は0.8%
 であった
・X1年3月31日決算整理まえの一般債権である貸付金に
 対する貸倒引当金残高は70千円であった
・A社の決算日は3月31日
【期末債権残高をベースにする方法での会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
貸倒引当金繰入 88千円※1 貸倒引当金 88千円※1
※1貸付金帳簿価額(5,000千円+8,800千円+2,000千円)
  ×貸倒実績率1%-貸倒引当金残高70千円
対象債権の期末残高に期末債権残高をベースに算定した貸倒実績率を掛けて貸倒見積高を算定し、差額補充法で貸倒引当金を計上します。
【期末債権の当初発生元本金額ベースの方法での会計処理】
① X1年3月31日(決算時)
借方 貸方
貸倒引当金繰入 30千円※1 貸倒引当金 30千円※1
※1期末貸付金の当初元本((6,000千円+9,000千円
  +10,000千円)×貸倒実績率0.8%
  -貸倒損失既発生額100千円)
  -貸倒引当金残高70千円
期末債権の当初発生元本金額に期末債権の当初発生元本金額をベースに算定した貸倒実績率を掛けた金額から、既に発生済みの貸倒損失をマイナスして貸倒見積高を算定し、差額補充法で貸倒引当金を計上します。
次のページでは、一般債権における貸倒実績率の算定方法について具体的にご紹介します。