貸倒処理済債権を回収した場合の会計処理

【貸倒処理済債権を回収した場合の
              会計処理】

■前期以前に貸倒れた債権を回収した場合

 全額償却債権取立益に計上

  ≪仕訳例≫
  (現金預金)XXX (償却債権取立益)XXX

■前期以前に発生し、当期に貸倒れた債権を
 回収した場合

 全額貸倒引当金へ戻入又は貸倒損失と相殺
 ※貸倒時の反対仕訳を計上

  ≪仕訳例≫
  (現金預金)XXX (貸倒引当金)XXX
          (貸倒損失)XXX

■当期に発生し、当期に貸倒れた債権を回収
 した場合

 全額貸倒損失と相殺
 ※貸倒時の反対仕訳を計上

  ≪仕訳例≫
  (現金預金)XXX (貸倒損失)XXX
回収見込みが無いと判断して、貸倒処理した債権の中には、稀にその後、見込に反して回収できるものがあります。

そのような債権を回収した場合の会計処理は、対象の債権が前期以前に発生したものか当期の発生したものか、また、貸倒た時期が前期以前か当期かにより異なります。

対象の債権が前期以前に発生し、かつ、前期以前に貸倒処理したものの場合は、その回収額は全額『償却債権取立益』に計上します。

それ以外のケースについては、貸倒が当期に発生しているため、その貸倒時に計上した仕訳の反対仕訳を計上し、貸倒処理をキャンセルする形で会計処理を行います。

具体的には、対象の債権が前期以前に発生し、かつ、当期に貸倒処理した場合は、その回収額の内、貸倒時に貸倒引当金で補填した金額は貸倒引当金に戻し入れ、貸倒損失として計上した金額は貸倒損失をキャンセルします。

対象の債権が当期に発生し、かつ、当期に貸倒処理した場合は、貸倒時に全額貸倒損失計上しているので、その貸倒損失をキャンセルします。
下記では、貸倒処理済債権を回収した場合の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社の当期における貸倒及び貸倒引当金の状況は下記の通りである。

・X1年4月1日における貸倒引当金残高は5,000千円であった
・X1年5月31日に前期に貸倒処理した売掛金3,000千円を
 回収した
・X1年6月30日に前期に計上した売掛金4,000千円が
 貸し倒れた
・X1年7月31日に当期に計上した売掛金7,000千円が
 貸し倒れた
・X1年8月1日に、X1年6月30日に貸倒処理した売掛金の内、
 3,000千円を回収した
・X1年9月1日に、X1年7月31日に貸倒処理した売掛金の内、
 2,000千円を回収した
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年5月31日(前期貸倒売掛金回収時)
借方 貸方
現金預金 3,000千円※1 償却債権取立益 3,000千円※1
※1前期貸倒処理済み売掛金回収額
前期に貸倒処理済みである売掛金を回収しているため、全額、償却債権取立益に計上します。
② X1年6月30日(前期発生売掛金貸倒時)
借方 貸方
貸倒引当金 4,000千円※2 売掛金 4,000千円※2
※2貸し倒れた売掛金金額
前期以前に発生した売掛金が貸し倒れたため、その貸倒金額は貸倒引当金で補填します。
③ X1年7月31日(当期発生売掛金貸倒時)
借方 貸方
貸倒損失 7,000千円※3 売掛金 7,000千円※3
※3貸し倒れた売掛金金額
当期に発生した売掛金が貸し倒れたため、その貸倒金額は全額、貸倒損失として計上します。
④ X1年8月1日(貸倒処理済売掛金回収時)
借方 貸方
現金預金 3,000千円※4 貸倒引当金 3,000千円※4
※4回収した貸倒処理済み売掛金金額
回収した金額分だけ、X1年6月30日の反対仕訳を計上します。ただし、相手勘定は『売掛金』ではなく回収により受領した『現金預金』となります。
⑤ X1年9月1日(貸倒処理済売掛金回収時)
借方 貸方
現金預金 2,000千円※5 貸倒損失 2,000千円※5
※5回収した貸倒処理済み売掛金金額
回収した金額分だけ、X1年7月31日の反対仕訳を計上します。ただし、相手勘定は『売掛金』ではなく回収により受領した『現金預金』となります。
次のページでは、貸倒引当金の引当対象である手形を裏書譲渡・割引した場合の会計処理について具体的にご紹介します。