仮想通貨交換業者が利用者から仮想通貨を買い付けた場合の会計処理

仮想通貨の購入時は、支払対価に手数料等の付随費用を加算した金額を資産として計上します。
【仮想通貨の取得価額】

仮想通貨の取得価額
    =支払対価+付随費用(購入手数料等)
(資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い第4項(8))
企業会計基準委員会が発行した『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い』では、仮想通貨に関する暫定的な会計処理が定められていますが、仮想通貨交換業者が利用者から仮想通貨を買い付けた場合における具体的な会計処理や勘定科目までは述べられていません。

そのため、その会計処理については、現状では既存の会計基準における他の資産の取り扱いから推測しなければなりません。

ただし、仮想通貨交換業者の会計処理については、暗号資産取引の浸透に伴う経理処理の必要性にこたえる形で、一般財団日本暗号資産取引業協会から『暗号資産取引業における主要な経理処理例示』が公表されており、こちらの会計処理を参照することができます。

具体的には、仮想通貨交換業者が自ら保有する仮想通貨は「自己保有暗号資産」の勘定科目で流動資産に計上するとしています。

仮想通貨交換業者は、仮想通貨の売買等を事業として行っているため、この「自己保有暗号資産」は、営業資産である棚卸資産の区分に該当すると推測されます。

また、仮想通貨交換業者が利用者から仮想通貨を買い付ける場合は、一般的に、利用者から仮想通貨交換業者へ預け入れられている仮想通貨を対象として取引が行われる場合がほとんどです。

そのような取引の場合、仮想通貨交業者は取得した仮想通貨を「自己保有暗号資産」として計上すると同時に、同額で「利用者区分管理信託」と「利用者からの預り金」を増額させます。

さらに、「利用者暗号資産」と「利用者からの預り暗号資産」を相殺する形で減額します。
【仮想通貨交換業者における仮想通貨の資産計上区分&科目】

資産区分
⇒「棚卸資産

勘定科目
⇒「自己保有暗号資産


【利用者から預かっている仮想通貨を購入する場合の仕訳】

仮想通貨取得の対価
⇒「利用者からの預り金」として負債計上、
  自己資産から「利用者区分管理信託」へ
  振替

取得により所有権を得た仮想通貨
⇒「「利用者暗号資産」をマイナスして「自
  己保有暗号資産」へ計上

所有権を得た仮想通貨に関する利用者への返還義務
⇒「利用者からの預り暗号資産」の負債勘定
  を減額
(資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い第22項
「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」に対するコメント10
棚卸資産の評価に関する会計基準第3項
暗号資産取引業における主要な経理処理例示Ⅰ・Ⅲ1(2)イ)
下記では、仮想通貨交換業者が利用者から仮想通貨を買い付けた場合の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。(参考:暗号資産取引業における主要な経理処理例示Ⅲ1(2)イ)
前提条件
仮想通貨交換業者であるA社は、利用者Bとの間で下記のような取引を行った。

・X1年4月1日に利用者Bより仮想通貨Xを@100円で10単位
 購入した
・取引の対象となった仮想通貨XはB社がA社に預け入れてい
 るものであった
・A社は利用者B社への対価の支払いを、利用者Bからの金銭
 の預け入れとして認識する
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(利用者Bからの取得時)
借方 貸方
自己保有暗号資産 1,000千円※1
利用者区分管理信託 
       1,000千円※1
利用者からの預り暗号資産 
       1,000千円※1
現金預金 1,000千円※1
利用者からの預り金 
       1,000千円※1
利用者暗号資産 
       1,000千円※1
※1仮想通貨Xの時価@100円×取得数10単位
取得した仮想通貨Xについて、自己保有暗号資産として資産計上し、相手勘定で現金預金を減額します。
同時に、仮想通貨Xの取得の支払分を利用者Bからの金銭等の預け入れとして認識するため、利用者区分管理信託を資産計上し、その返還義務を利用者からの預り金として負債計上します。
A社に所有権が移動した仮想通貨Xについては、利用者暗号資産から減額し、その相手勘定でB社への仮想通貨の返還義務である利用者からの預り暗号資産の負債勘定を清算します。
次のページでは、仮想通貨交換業者が利用者に仮想通貨を売り付けた場合の会計処理について具体的にご紹介します。