仮想通貨交換業者が保有している仮想通貨を利用者が保有している他の仮想通貨と
交換する場合の会計処理


企業会計基準委員会が発行した『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い』では、仮想通貨に関する暫定的な会計処理が定められていますが、仮想通貨交換業者が保有している仮想通貨を利用者が保有している他の仮想通貨と交換する場合の具体的な会計処理は定められていません。

ただし、国税庁が公表した『仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)』では、仮想通貨利用者が保有している仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合の所得の計算方法が定められています。

そのため、現状では財務会計上もこの『仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)』で定められてる方法で、会計処理をすることが適切であると考えられます。

具体的には、保有している仮想通貨で購入する仮想通貨の取引時における時価を、保有している仮想通貨の譲渡価額とし、その譲渡価額と譲渡原価(支払対価とする仮想通貨の帳簿価額)の差額を、仮想通貨の売却損益として計上します。

また、仮想通貨交換業者の会計処理については、暗号資産取引の浸透に伴う経理処理の必要性に応える形で、一般財団日本暗号資産取引業協会から『暗号資産取引業における主要な経理処理例示』が公表されており、使用する勘定科目及びPL区分についてはこの規定を参照することができます。

具体的には、交換により発生する損益は営業収益の区分で、「暗号資産売買等損益」の勘定科目に計上するとされています。
【保有している仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合の会計処理】

仮想通貨売却損益
=交換により取得する仮想通貨の時価
 ー対価として支払う仮想通貨の譲渡原価

※勘定科目は「暗号資産売買等損益」を使用
 し営業収益の区分に計上
(資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い第22項
仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)3
暗号資産取引業における主要な経理処理例示Ⅲ1(2)ハ)
下記では、仮想通貨利用者が保有している仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。(参考:仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)3
暗号資産取引業における主要な経理処理例示Ⅲ1(2)ハ)
前提条件
仮想通貨交換業者であるA社は、下記のような取引を行った。

・A社はX1年4月1日に仮想通貨Xを1単位100千円で、3単位
 購入した
・A社はX1年5月1日に、保有している仮想通貨X3単位で、
 利用者Bが保有している仮想通貨Y30単位
 (A社に預け入れ
 ている)を購入した
・X1年5月1日における利用者Bから預かっている仮想通貨Y
 帳簿価額は@6円であった
・X1年5月1日における仮想通貨Xの時価は、1単位当り@110
 千円であった
・X1年5月1日における仮想通貨Yの時価は、1単位当り@11
 千円であった
・利用者Bは交換により取得した仮想通貨XをそのままAに預
 け入れている
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(仮想通貨購入時)
借方 貸方
仮想通貨(X) 300千円※1 現金預金 300千円※1
※1仮想通貨X1単位当り@100千円×3単位
仮想通貨購入にかかった支出を、仮想通貨の勘定科目で資産計上します。
② X1年5月1日(交換時)
借方 貸方
自己保有暗号資産(Y) 
        330千円※2

利用者からの預り暗号資産 
        180千円※4
利用者暗号資産(X) 
        330千円※5
自己保有暗号資産(X) 
        300千円※1
暗号資産売買等損益 30千円※3

利用者暗号資産(Y) 180千円※4
利用者からの預り暗号資産 
        330千円※5
※1対価として支払った仮想通貨Xの帳簿価額300千円
※2交換時の仮想通貨Yの時価@11円×30単位
※3仮想通貨Yの時価@330千円ー仮想通貨Xの帳簿価額
  300千円
※4交換時の利用者Bが預け入れている仮想通貨の簿価@6円
  ×30単位
※5交換時の仮想通貨Xの時価@110円×3単位
A社は取得した仮想通貨Yを取得時の時価で自己保有暗号化資産として資産計上し、相手勘定でその対価として支払った仮想通貨X分の帳簿価額を減額、差額を暗号資産売買等損益に計上します。
利用者Bから預っていた仮想通貨Yについては、帳簿価額を利用者暗号資産の勘定から減額し、相手勘定でその返還義務である利用者からの預り暗号資産の負債を減額します。
同時に、利用者Bに所有権が移った仮想通貨Xについて、交換時の時価で利用者暗号資産として資産計上し、相手勘定で返還義務である利用者からの預り暗号資産を負債計上します。
次のページでは、仮想通貨交換業者が利用者との間で仮想通貨のデリバティブ取引を行う場合の会計処理について具体的にご紹介します。