研究開発用に取得した固定資産の取り扱い

研究開発費は、発生時に収益を獲得できるかが不明確であるため、会社の資産としては計上することはできず、発生時の費用として処理しなければなりません。(研究開発費等に係る会計基準三
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q1)
また、通常は固定資産の取得は資産計上処理するものでありますが、特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合は、同じく”発生時に収益を獲得できるかが不明確である”という理由から、資産計上は認められず全額取得時の研究開発費として費用処理しなければなりません。(研究開発費等に係る会計基準六(注1))
ここでいう”他の目的に使用できない”とは、特定の研究開発プロジェクトの目的のみに使用され、機能的・物理的に他の用途に使用できないということを指しています。

例えば、特定の研究専門の測定器や試験設備などで、当該研究開発が完了した後に他の用途に転用することができず、廃棄してしまうようなものが該当します。

また、”特定の”研究開発目的にのみ使用される固定資産のみが費用計上の対象とされており、製造設備など営業活動に転用できるケースはもちろんのこと、同じ研究開発目的であっても、異なるプロジェクトに転用できる場合についても、この対象から除外されることに留意が必要です。

なお、この場合の”プロジェクト”とは、会社内において予算・人事等の管理を行う単位で判断することが適当であると考えられます。

さらに、"他の用途に使用できない"かどうかの判定においては、必ずしも判定の時点で他の目的への使用予定や計画が明確になっている必要はなく、あくまでも、その資産自体に汎用性があり転用が可能かどうかで判断します。

判定時に転用が可能と判断して固定資産として計上した後に、他の研究開発等に転用しないことが明らかとなり除却や廃棄を行った場合は、通常の固定資産と同様に残存簿価を除却又は廃棄損失として計上して処理します。 (研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針5・28項
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q6)
研究開発用の固定資産の取得の特殊なケースとしては、実証プラント(パイロットプラント)で試作や稼働確認を行う装置等の資産があります。

実証プラントとは、基礎研究を経て製品の商品化及び量産化をするために、製品の品質や生産方法について実験を行う試験用の工場のことを言います。

実証プラントで試作・試験された装置等は、研究開発が成功した場合には、本番の生産設備として使用することが可能なケースが多々あり、一見すると転用可能と判断して資産計上できるかのように思われます。

しかし、このような資産に関しては、将来の転用の可能性があるか否かを問わず、全て研究開発費として処理するとされています。

なぜならば、実証プラントで行われているのは、装置等そのものの研究開発であり、試行錯誤の研究開発の段階では、当該装置等が将来生産設備として使用可能なものになり収益獲得に貢献できるかが不明確であるからです。(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q4)
研究開発費となる資産の取得 研究開発費とならない
資産の取得

特定の研究開発目的のための資産

実証プラントで試作や稼働確認が行われる装置等の資産

機能的・物理的に他のプロジェクトに転用可能な資産

※他の"研究開発プロジェクト"に転用可能な場合を含む

※判定の時点で転用の予定がなくてもOK
次のページでは、研究開発の受託・委託契約で支出した研究開発費の会計処理について具体的にご紹介します。