市場販売目的のソフトウェアと研究開発
(最初に製品化された製品マスター完成まで)

市場販売目的のソフトウェアの制作において、その研究開発の終了時点までに発生した費用は研究開発費として発生時に費用計上します。

ソフトウェアを市場で販売する場合は、製品マスター(複写可能な完成品)を制作し、それを複写したものを販売するため、ここでいう研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスターの完成時点であるとされています。

すなわち、研究開発の終了時点を判断するにあたっては、①製品マスターについての販売の意思が明らかにされること、②最初に製品化された製品マスターが完成すること、の2つの要件を満たすことが必要になります。

さらに、最初に製品化された製品マスターの完成時点は、製品性を判断できる程度のプロトタイプ(製造されたプログラムの試作版)が完成していること、又は、プロトタイプを制作しない場合は、製品として販売するための重要な機能が完成しており、かつ、重要な不具合を解消していることにより判断します。

研究開発の終了時点の判定要件(①②両方を満たすことが必要)
①販売の意思が明らかにされること
②最初に製品化された製品マスターが完成すること
 ※完成版としての品質は求められず、ソフトウェアとして
  の重要な機能を重要な不具合なく備えていればOK!
【プロトタイプを制作するケース】
製品性を判断できる程度のプロトタイプが完成していること

【プロトタイプを制作しないケース】
製品として販売するための重要な機能が完成してること
 かつ
重要な不具合を解消していること
販売の意思が明らかにされている時点とは、製品マスターの完成の前後に関わらず、当該製品を市場で販売することを意思決定した時点です。

典型的な具体例としては、製品番号を付す、又はカタログに載せるなどの方法で、市場で販売する意思が明確に確認できるようになった時点などが挙げられます。
「最初に製品化された製品マスター」の完成とは、機能評価版についてバグ取りや一部機能変更が終了した段階の製品マスターの完成と考えられます。

具体的な判断基準は、プロトタイプが制作されるかどうかで異なります。

プロトタイプを制作するケースの場合、製品が市場で受け入れられるかどうか、他社製品との競争力を有しているか、新しい技術が利用される場合にはその技術が製品において利用可能かどうかなどの検討を行うことができるプロトタイプが完成していることが必要ということになります。
プロトタイプの制作を行わずに製品マスターを制作する場合には、少なくとも製品として販売するための必要な機能が完成していること、かつ、重要な不具合を解消していることが必要になります。
ここで登場するプロトタイプもしくは製品マスターには、製品の完成版としての品質は求められず、重要でない不具合や改良の余地が残っていたとしても問題はありません。

例えば、入力画面や出力帳票などが完全なものではない、操作性に関してはまだ改良の余地がある、処理速度の面で改善の余地が残されているといった状態でも、問題を解消するための方法が明確になっており、それらの問題が製品の完成に当たって重要なものではないことが確認されていれば、資産計上の要件を満たしているものと考えられます。(研究開発費等に係る会計基準(注3)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針8・32項
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の3(3)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q10)
次のページでは、市場販売目的のソフトウェアと研究開発(最初に製品化された製品マスター完成後)について具体的にご紹介します。