ソフトウェア制作における研究開発費の会計処理

ソフトウェアの制作過程には研究開発活動が含まれているので、研究開発活動に該当する部分の支出は研究開発費として発生時に費用処理をしなければなりません。

ソフトウェア制作費は、その制作目的により、将来の収益との関係が異なることから、制作目的別に会計処理が規定されています。制作目的は研究開発目的、販売目的、自社利用目的の3種類に区分され、販売目的はさらに受注制作と市場販売目的に区分されます。

これらのソフトウェアの会計処理をまとめると、下記のようになります。
制作目的 会計処理
研究開発目的 研究開発費
販売目的 受注制作 棚卸資産又は売上原価
市場販売 最初に製品化された製品マスターの完成までの費用 研究開発費
製品マスターの改良・強化のための費用 無形固定資産
製品マスターの著しい改良のための費用 研究開発費
バグ取り等の機能維持のための費用 発生時の費用
自社利用目的 将来の収益獲得又は費用削減が確実 無形固定資産
将来の収益獲得又は費用削減が不確実 研究開発費
研究開発費等に係る会計基準では、研究開発費は発生時に収益を獲得できるかが不明確であるため、会社の資産としては計上することはできず、発生時の費用として処理しなければならないと定めています。

さらに、特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない固定資産を取得した場合も、資産計上は認められず全額取得時の研究開発費として費用処理しなければなりません。

これらの定めに則り、研究開発目的のソフトウェアの制作費を支出した場合は、発生時に費用計上します。(研究開発費等に係る会計基準三
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q1
研究開発費等に係る会計基準(注1)
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の3(1)(2)
販売目的の受注制作については、契約により将来の収益が保証されていることがほとんどですので、制作費用は全額研究開発費には該当しません。これらの支出は請負工事の会計処理に準じて、棚卸資産又は売上原価にされます。
市場販売目的のソフトウェアについては、最初に製品化された製品マスターの完成までは研究開発とみなされそこまでの支出は研究開発費として処理します。

また、最初に製品化された製品マスター完成後の著しい改良についても研究開発に該当し、研究開発費として処理します。

それに対して、最初に製品化された製品マスター完成後の通常の改良・強化のための支出は、ソフトウェアとして無形固定資産に計上します。さらに、バグ取り等の機能維持のための費用は、メンテナンスとしては発生時に適切な勘定科目で費用計上します。

研究開発費として処理される市場販売目的のソフトウェアの制作費の詳細は、下記のページをご参照ください。
市場販売目的のソフトウェアと研究開発(最初に製品化された製品マスター完成まで)
市場販売目的のソフトウェアと研究開発(最初に製品化された製品マスター完成後)
自社利用目的のソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減が不確実な場合は、研究開発費として処理し、それ以外はソフトウェアとして無形固定資産に計上します。

研究開発費として処理される自社利用目的のソフトウェアの制作費の詳細は、下記のページをご参照ください。
自社利用目的のソフトウェアと研究開発 (研究開発費等に係る会計基準(注3)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する
実務指針8・9・15・32・33・34
研究開発費に係る会計基準の設定に関する意見書三の3(3))
次のページでは、市場販売目的のソフトウェアと研究開発(最初に製品化された製品マスター完成まで)について具体的にご紹介します。