差入側における建設協力金の基本の会計処理

【差入側における建設協力金の会計処理】

 ■建設協力金預託時の会計処理

 ≪仕訳イメージ≫
  (長期貸付金)XXX ※1  (現金預金)XXX ※2
  (長期前払賃料)XXX ※3

 ※1建設協力金は時価(返済日までのキャッシ
 ュ・フローを割引いた現在価値)で資産計上

 ※2預託時支払額

 ※3支払額と建設協力金は時価の差額は、
 長期前払賃料に計上


 ■返済猶予&無利子期間の会計処理

 ≪仕訳イメージ≫
  (長期貸付金)XXX ※4  (受取利息)XXX ※4
  (支払賃料)XXX ※5 (前払賃料)XXX ※5

 ※4建設協力金の直前の帳簿価額×預託時の
 時価の算定で使用した割引率

 ※5支出時に計上した長期前払費用を期間案分
 した金額



 ■分割返済&利子受取開始後の期間の会計処理

 ≪仕訳イメージ≫
  (長期貸付金)XXX ※7  (受取利息)XXX ※4
  (現金預金)XXX ※6  
  (支払賃料)XXX ※5 (前払賃料)XXX ※5
  (現金預金)XXX ※8 (貸付金)XXX ※8

 ※4建設協力金の直前の帳簿価額×支出時の
 時価の算定で使用した割引率

 ※5支出時に計上した長期前払費用を期間案分
 した金額

 ※6建設協力金の額面額×約定利子率

 ※7※4-※6

 ※8建設協力金償還額
建設協力金は、預託時に時価で長期貸付金等の勘定科目で資産計上します。

預託時の時価は、預託から返済期日までのキャッシュ・フロー(約定利息及び返還額)を割り引いた現在価値で算定します。

この時価と、建設協力金の実際の預託額の差は、長期前払家賃として計上し、契約期間にわたって支払家賃に振り替え、各期に費用分配します。

これは、金利が付かない期間又は低金利の期間において、差入側は市場での受取利息を得るという機会利益を失っており、その分を賃料として計上すべきであるという考えに基づきます。

預託後の受取利息計上時においては、直前の建設協力金の帳簿価額に預託時の時価を算定する際に使用した割引率を掛けた金額で受取利息を計上します。

実際の利息受取額は約定利子率に基づいて算定されるため、両者には差額が発生しますが、その差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第133・309項・[設例15]
下記では、差入側における建設協力金の基本の会計処理を、具体例を使ってご紹介します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針[設例15]
前提条件
A社はX1年4月1日に、テナントとして入居予定のビル建設に要する資金を、地主B社に建設協力金として下記の条件で預託した。
・預託総額10,000千円
・返済条件:当初5年は据置、その後毎年3月31日に2,000
 千円づつ返済される
・金利条件:当初5年は無利息、その後毎年3月31日に
 年利2%を受取る
・預託時の建設協力金の時価の算定に使用すべき利子率は
 5%である
・簡略化のため、長短分類の振替えは省略する
・A社の決算日は3月31日である
【A社の会計処理】
■預託時時価の算定
X7年3月31日入金(返済額2,000千円+受取利息200千円)÷(1+0.05)^6+X8年3月31日入金(返済額2,000千円+受取利息160千円)÷(1+0.05)^7+X9年3月31日入金(返済額2,000千円+受取利息120千円)÷(1+0.05)^8+X10年3月31日入金(返済額2,000千円+受取利息80千円)÷(1+0.05)^9+X11年3月31日入金(返済額2,000千円+受取利息40千円)÷(1+0.05)^10
=7,205千円
① X1年4月1日(預託時)
借方 貸方
長期貸付金 7,205千円※2
長期前払賃料 2,795千円※3
現金預金 10,000千円※1
※1建設協力金預託額
※2建設協力金預託時時価
※3(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)
建設協力金を時価で長期貸付金に計上します。預託額と時価の差額は長期前払賃料に計上します。
② X2年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 360千円※5
支払賃料 280千円※4
受取利息 360千円※5
長期前払賃料 280千円※4
※4(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
※5建設協力金帳簿価額7,205千円×割引率5%
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上し、相手勘定で建設協力金の帳簿価額を増額します。同時に、当期分の長期前払賃料を支払賃料に振替えて費用化ます。
③ X3年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 378千円※6
支払賃料 280千円※4
受取利息 378千円※6
長期前払賃料 280千円※4
※4(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
※6建設協力金帳簿価額7,565千円×割引率5%
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上し、相手勘定で建設協力金の帳簿価額を増額します。同時に、当期分の長期前払賃料を支払賃料に振替えて費用化ます。
④ X4年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 397千円※7
支払賃料 280千円※4
受取利息 397千円※7
長期前払賃料 280千円※4
※4(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
※7建設協力金帳簿価額7,943千円×割引率5%
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上し、相手勘定で建設協力金の帳簿価額を増額します。同時に、当期分の長期前払賃料を支払賃料に振替えて費用化ます。
⑤ X5年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 417千円※8
支払賃料 280千円※4
受取利息 417千円※8
長期前払賃料 280千円※4
※4(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
※8建設協力金帳簿価額8,340千円×割引率5%
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上し、相手勘定で建設協力金の帳簿価額を増額します。同時に、当期分の長期前払賃料を支払賃料に振替えて費用化ます。
⑥ X6年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 438千円※9
支払賃料 280千円※4
受取利息 438千円※9
長期前払賃料 280千円※4
※4(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
※9建設協力金帳簿価額8,757千円×割引率5%
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上し、相手勘定で建設協力金の帳簿価額を増額します。同時に、当期分の長期前払賃料を支払賃料に振替えて費用化ます。
⑦ X7年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 260千円※13
現金預金 200千円※12
支払賃料 279千円※10
現金預金 2,000千円※14
受取利息 460千円※11

長期前払賃料 279千円※10
長期貸付金 2,000千円※14
※10(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
  (端数調整を含む)
※11建設協力金帳簿価額9,195千円×割引率5%
※12建設協力金額面金額10,000千円×約定利子率2%
※13受取利息計上額460千円-利息受取額200千円
※14建設協力金償還額
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上します。相手勘定で、約定利子を現金預金に計上し、受取利息計上額との差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。同時に、当期分の前払賃料を長期支払賃料に振替えて費用化します。
また、償還された建設協力金を帳簿価額からマイナスします。
⑧ X8年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 213千円※17
現金預金 160千円※16
支払賃料 279千円※10
現金預金 2,000千円※14
受取利息 373千円※15

長期前払賃料 279千円※10
長期貸付金 2,000千円※14
※10(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
  (端数調整を含む)
※14建設協力金償還額
※15建設協力金帳簿価額7,455千円×割引率5%
※16建設協力金額面金額8,000千円×約定利子率2%
※17受取利息計上額373千円-利息受取額160千円
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上します。相手勘定で、約定利子を現金預金に計上し、受取利息計上額との差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。同時に、当期分の前払賃料を長期支払賃料に振替えて費用化します。
また、償還された建設協力金を帳簿価額からマイナスします。
⑨ X9年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 163千円※20
現金預金 120千円※19
支払賃料 279千円※10
現金預金 2,000千円※14
受取利息 283千円※18

長期前払賃料 279千円※10
長期貸付金 2,000千円※14
※10(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
  (端数調整を含む)
※14建設協力金償還額
※18建設協力金帳簿価額5,668千円×割引率5%
※19建設協力金額面金額6,000千円×約定利子率2%
※20受取利息計上額283千円-利息受取額163千円
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上します。相手勘定で、約定利子を現金預金に計上し、受取利息計上額との差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。同時に、当期分の前払賃料を長期支払賃料に振替えて費用化します。
また、償還された建設協力金を帳簿価額からマイナスします。
⑩ X10年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 112千円※23
現金預金 80千円※22
支払賃料 279千円※10
現金預金 2,000千円※14
受取利息 192千円※21

長期前払賃料 279千円※10
長期貸付金 2,000千円※14
※10(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
  (端数調整を含む)
※14建設協力金償還額
※21建設協力金帳簿価額3,831千円×割引率5%
※22建設協力金額面金額4,000千円×約定利子率2%
※23受取利息計上額千円-利息受取額千円
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上します。相手勘定で、約定利子を現金預金に計上し、受取利息計上額との差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。同時に、当期分の前払賃料を長期支払賃料に振替えて費用化します。
また、償還された建設協力金を帳簿価額からマイナスします。
⑪ X11年3月31日(決算時)
借方 貸方
長期貸付金 57千円※26
現金預金 40千円※25
支払賃料 279千円※10
現金預金 2,000千円※14
受取利息 97千円※24

長期前払賃料 279千円※10
長期貸付金 2,000千円※14
※10(預託額10,000千円-預託時時価7,205千円)÷10年
  (端数調整を含む)
※14建設協力金償還額
※24建設協力金帳簿価額1,943千円×割引率5%
※25建設協力金額面金額2,000千円×約定利子率2%
※26受取利息計上額97千円-利息受取額40千円
建設協力金の帳簿価額に、預託時の時価の算定で使用した割引率を掛けた金額を受取利息として計上します。相手勘定で、約定利子を現金預金に計上し、受取利息計上額との差額は建設協力金の帳簿価額に加算します。同時に、当期分の前払賃料を長期支払賃料に振替えて費用化します。
また、償還された建設協力金を帳簿価額からマイナスします。
次のページでは、差入側における建設協力金の割引現在価値の算定に使用する利子率について具体的にご紹介します。