創立費の会計処理

創立費とは、会社設立のために要した費用のことを言います。
具体的には、下記のような支出が挙げられます。
【創立費となる支出】

●定款作成費

●諸規則作成費

●株式募集のための広告費

●目論見書印刷費

●株券印刷費

●創立事務所の賃借料

●設立事務に使用する使用人の給与

●金融機関の取扱手数料

●証券会社の取扱手数料

●創立総会に関する費用

●その他会社設立事務に関する費用

●発起人が受ける報酬で定款に記載して
 創立総会の承認を受けた金額

●設立登記の登録免許税
創立費は、原則として支出時に営業外費用として費用計上しますが、例外として繰延資産計上することも認められています。
創立費の原則の会計処理 創立費の例外の会計処理

支出時に営業外費用として計上

支出時に繰延資産として計上し、償却により費用化(営業外費用)
繰延資産に計上した創立費は、会社の成立の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法で償却します。(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(3))
なお、支出の効果が期待されなくなった繰延資産については、その未償却残高を一時に償却しなければなりません。(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(6))
創立費に適用した会計処理は、その後の創立費に対しても同一の会計処理を適用しなければなりません。

創立費を会計処理した年度の前事業年度に同じく創立費を会計処理している場合で、前年度と異なる会計処理を採用する場合は、原則として会計方針の変更として取り扱います。

ただし、支出内容に著しい変化がある場合には、新たな会計事実の発生として、会計方針の変更とせずに異なる会計方針を選択することができます。

この場合、異なる会計方針を採用した旨及び、同一の会計処理を採用した場合の想定値と比較した影響額、会計方針の変更として取り扱わなかった理由を追記情報として注記します。(繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い第3項(7))
下記では、創立費を繰延資産として計上するケースの会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社はX1年4月1日に会社設立のための費用を総額10,000千円支出し、繰延資産に計上した。

・創立費は5年間で月額均等償却する
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(創立費の支出時)
借方 貸方
創立費 10,000千円※1 現金 10,000千円※1
※1会社設立のための支出総額
会社設立のために支出した費用を、”創立費”の費目で繰延資産として計上します。
② X2年3月31日(第1回決算日)
借方 貸方
創立費償却 2,000千円※2 創立費 2,000千円※2
※2 10,000千円÷60カ月×12カ月
資産として計上した創立費の内、当期の月数の分の金額を償却費として費用計上します。
③ X3年3月31日(第2回決算日)
借方 貸方
創立費償却 2,000千円※3 創立費 2,000千円※3
※3 10,000千円÷60カ月×12カ月
第1回決算日と同様の仕訳を行います。
④ X4年3月31日(第3回決算日)
借方 貸方
創立費償却 2,000千円※4 創立費 2,000千円※4
※4 10,000千円÷60カ月×12カ月
第2回決算日と同様の仕訳を行います。
⑤ X5年3月31日(第4回決算日)
借方 貸方
創立費償却 2,000千円※5 創立費 2,000千円※5
※5 10,000千円÷60カ月×12カ月
第3回決算日と同様の仕訳を行います。
⑥ X6年3月31日(第5回決算日)
借方 貸方
創立費償却 2,000千円※6 創立費 2,000千円※6
※6 10,000千円÷60カ月×12カ月
第4回決算日と同様の仕訳を行います。当該仕訳を完了すると創立費の帳簿価額はゼロとなり償却が完了します。
次のページでは、開業費の会計処理について具体的にご紹介します。