フルペイアウトとは

ファイナンス・リース取引に該当するかどうかの要件の1つとして「借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」であることが定められています。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準5項)
この要件をフルペイアウトといます。
具体的には、下記の(1)又は(2)の基準を満たす場合、フルペイアウトの要件を満たすと判断できます。(リース取引に関する会計基準の適用指針9項)
基準名 基準内容
(1)現在価値基準 リース料総額の現在価値≧リース物件の合理的見積額×概ね90%
(2)経済的耐用年数基準 解約不能リース期間≧リース物件の経済的耐用年数×概ね75%
※現在価値基準の簡便法として設定されている
※借手がリース物件に係るほとんどすべての
 コストを負担しないことが明らかな場合は
 現在価値基準のみで判定
現在価値基準がフルペイアウトの判定を行う原則的な基準ですが、現在価値の計算をすべてのリース取引について行うことは実務上極めて煩雑と考えられるところから、簡便法としての経済的耐用年数基準が設けられています。(リース取引に関する会計基準の適用指針94項)
これは、借手がリース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する場合には、借手はリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することになると推定でき、同様に、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができる場合には、その使用に伴って生じるコストを負担することになると推定できるという考えに基づいています。(リース取引に関する会計基準の適用指針93項)
ただし、例えば、リース物件が中古市場で高値取引されており、リース料がその分割安に設定されている場合などの特殊なケースについては、借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担せず、上記の推定が覆される場合があります。
このように、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、中古市場の存在により、借手がリース物件に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合は、簡便法である経済的耐用年数基準の結果は度外視され、原則法の現在価値基準のみにより判定を行います。(リース取引に関する会計基準の適用指針13項)
また、両基準とも判定に見積の要素が多いため、判定のための数値が『概ね』90%又は『概ね』75%とされており、例えば現在価値基準89%といった90%を下回る結果であっても実質的にフルペイアウトであると考えられる場合は、ファイナンス・リース取引と判定されることになります。(リース取引に関する会計基準の適用指針94項)
次のページでは、フルペイアウトの判定基準の1つである現在価値基準について具体的にご紹介します。