所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理(借手)

ファイナンス・リース取引については、その経済的実態が資金の借入とその資金によるリース物件の取得とみなされ、通常の売買取引に準じて会計処理を行います。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準9・38項)
そのため、借手はリース取引開始日にリース料総額の割引現在価値を資金の借入としてリース債務に計上すると同時に、その借入資金により取得した資産としてリース資産を計上します。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準10・11項)
割引現在価値の算定の際に控除された利息相当額は、リース期間にわたり利息法により配分します。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準11項)
具体的には、各期日に支払う支払リース料の内、その期間に帰属する利息相当額を利息の支払いとして費用計上し、残額分を元本の返済としてリース債務から減額します。(リース取引に関する会計基準の適用指針23・24項)
所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース資産の減価償却費計上額については、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定します。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準12項)
下記では、所有権移転ファイナンス・リース取引の借手の会計処理の流れを、具体例を使ってご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針〔設例1-1〕)
前提条件
B社は物件Xを下記の条件でA社からリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・解約不能リース期間3年
・借手の見積り現金購入価額は25,000千円
・貸手のリース物件の購入価額は貸手において明らか
 ではない
・リース料年額10,000千円(支払は1年ごとに後払),
 リース料総額30,000千円
・リース物件の経済的耐用年数5年
・借手の減価償却方法は定額法
・借手の追加借入利子率は年8%
・借手は貸手の計算利子率を知り得ない
・リース取引開始日はX1年4月1日
・B社の決算日は3月31日
【現在価値基準による判定】
リース料総額の現在価値
10,000千円÷(1+0.08)+10,000千円÷(1+0.08)^2+10,000千円÷(1+0.08)^3=25,771円
リース料総額の割引現在価値25,771千円÷現金販売価額25,000千円=103%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】
解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。
経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。
所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。
上記の判定結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
【B社の会計処理】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース資産 25,000千円※1 リース債務 25,000千円※1
※1B社の見積現金購入価額
B社は貸手であるA社での物件Xの購入価額を知り得ないため、B社での見積現金購入価額25,000千円とリース総額の割引現在価値25,771千円の内、小さいほうである見積現金購入価額25,000千円でリース資産とリース債務を計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 7,575千円※4
支払利息 2,425千円※3
現金預金 10,000千円※2
※2支払いリース料
※3リース債務残高25,000千円×計算利子率9.70%
  計算利子率は下記の計算で算定で算定
  10,000千円÷(1+r)+10,000千円÷(1+r)^2+10,000千円
  ÷(1+r)^3=25,000千円
  r=9.70%
※4支払リース料10,000千円-利息相当額2,425千円
支払ったリース料の内、利息相当額を支払利息として費用計上し、残確を返済分としてリース債務残高をマイナスします。利息相当額を計算する際の利子率は、リース料総総額の現在価値が、リース資産債務計上額である25,000千円と一致するように逆算して計算します。
③ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※5 減価償却累計額 8,333千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
リース資産の減価償却費を計上します。所有権移転外ファイナンス・リース取引であるため、残存価格はゼロとし、物件Xの経済的耐用年数の5年ではなく解約不能リース期間の3年で償却を行います。
④ X3年3月31日(第2回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 8,310千円※7
支払利息 1,690千円※6
現金預金 10,000千円※2
※2支払リース料
※6期首リース債務残高(25,000千円‐7,575千円)×9.70%
※7支払リース料10,000千円-利息相当額1,690千円
第1回のリース料支払日と同様に会計処理を行います。
⑤ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※5 減価償却累計額 8,333千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
第1回の決算日と同様に会計処理を行います。
⑥ X 4年3月31日(第3回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 9,115千円※9
支払利息 885千円※8
現金預金 10,000千円※2
※2支払いリース料
※8期首リース債務残高(25,000千円‐7,575千円-8,310
  千円)×9.70%
※9支払リース料10,000千円-利息相当額885千円
第2回のリース料支払日と同様に会計処理を行います。
⑦ X4年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,334千円※5 減価償却累計額 8,334千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
第2回の決算日と同様に会計処理を行います。
上記の会計処理を継続した結果、B社におけるリース取引に関連するBS残高は下記のようになります。
リース債務:0千円
リース資産:25,000千円
リース資産の減価償却累計額:25,000千円
⑧ X4年3月31日リース物件の返却時
借方 貸方
減価償却累計額 25,000※10 リース資産 25,000※10
※10物件Xの帳簿残高
リース物件の返却時には、資産計上したリース資産と減価償却累計額を相殺する形で仕訳処理を行います。この処理により、リース取引に関連するBS残高はゼロになり、リース取引が完了します。
次のページでは、ファイナンス・リース取引の借手におけるリース資産・リース債務の計上額の算定方法についてご紹介します。