ファイナンス・リース取引の借手におけるリース資産・リース債務の計上額
借手におけるリース取引開始時のリース資産及びリース債務の計上額は原則として、リース総額から利息相当額を控除して算定するとされています。
ここで控除された利息相当額は、リース期間にわたって利息法により各期に費用配分されます。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準11項
リース取引に関する会計基準の適用指針23・24・38・39・106・107項)
リース取引に関する会計基準の適用指針23・24・38・39・106・107項)
リース取引は最終的に、各期の支払リース料からリース債務返済分として計上される金額の合計でリース債務が完済されるように会計処理しなければなりません。そのため、リース取引開始時における利息相当額とリース期間にわたって計上される利息相当額は同一の計算利子率を使用して算定します。
一方で、リース資産及びリース債務の計上額は、リース取引に関する会計基準の適用指針において、リース取引が置かれている状況に応じて、下記の3つの中から適用される旨が明示されています。
【リース資産及びリース債務の計上額の選択肢】
・貸手の現金購入価額
・借手の見積現金購入価額(借手がリース物件
を現金で買うと仮定した場合に想定される
購入価額)
・リース料総額の割引現在価値
・貸手の現金購入価額
・借手の見積現金購入価額(借手がリース物件
を現金で買うと仮定した場合に想定される
購入価額)
・リース料総額の割引現在価値
そのため、実務的にはリース資産及びリース債務の計上額が先に決定し、リース料総額の割引現在価値がリース資産及びリース債務の計上額と一致するように計算利子率を算定するという流れになります。
リース資産とリース債務の計上額について、上記3つの選択肢のいずれが適用されるかは、リース物件の貸手の現金購入価額が明らかな場合とそうでない場合で異なり、それぞれ下記のように定められています。(リース取引に関する会計基準の適用指針22・37項)
【貸手の現金購入価額が明らかな場合】
所有権移転外 ファイナンス・リース取引 |
所有権移転 ファイナンス・リース取引 |
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下記①と②のいずれか低い額 ① リース料総額等の割引現在 価値 ② 貸手の現金購入価額 |
貸手の現金購入価額 |
【貸手の現金購入価額が明らかではない場合】
所有権移転&移転外共通 |
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下記①と②のいずれか低い額 ① リース料総額の割引現在価値 ② 借手の見積現金購入価額 |
この時使用される"リース料総額等の割引現在"を算定する際に用いる割引率は、現在価値基準で算定する割引現在を計算する際に用いる計算利子率と同様です。
具体的には、借手が貸手の計算利子率を知りえる場合は、当該貸手の計算利子率を、知りえない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用します。(リース取引に関する会計基準の適用指針17・22・37項)
具体的には、借手が貸手の計算利子率を知りえる場合は、当該貸手の計算利子率を、知りえない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用します。(リース取引に関する会計基準の適用指針17・22・37項)
【リース料総額等の割引現在を算定する際の割引率】
貸手の計算利子率を知り得る | 貸手の計算利子率を知り得ない |
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貸手の計算利子率 ※貸手においては常にこちらを 採用 |
(1)リースと同一期間の借手の 新規長期借入金等の利率 【具体例】 ・契約時点の利率 ・契約が行われた月の月初又は 月末の利率 ・契約が行われた月の平均利率 ・契約が行われた半期の 平均利率 (2)リースと同一期間の スワップレートに借手の信用 スプレッドを加味した利率 |
上記のルールでリース資産・リース債務の計上額が決定したら、その後の利息分を算定する計算利子率については、リース料総額等の割引現在価値が計上されたリース資産・負債の金額と一致するように選択されます。具体的には、下記のような組み合わせとなります。(リース取引に関する会計基準の適用指針24・39項)
【計算利子率】
リース資産&負債計上額 | 計算利子率 |
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貸手の現金購入価額 |
貸手の計算利子率 |
リース料総額を貸手の計算利子率で割り引いた現在価値 |
貸手の計算利子率 |
リース料総額を借手の追加借入利子率で割り引いた現在価値 |
借手の追加借入利子率 |
借手の見積現金購入価額 |
リース料総額の現在価値=見積現金購入価額となる利率 |
次のページではファイナンス・リース取引の借手における割引現在価値算定時の将来キャッシュ・フローの算定方法についてご紹介します。