リース料に含まれる維持管理費相当額等の
取り扱い(借手)

Question
支払リース料の中に、固定資産税や保険料等の維持管理費用相当額が含まれている場合、借手においてこれらはどのように会計処理したらよいでしょうか。
【Answer】
支払リース料に含まれるリース物件の固定資産税、保険料等の諸費用を維持管理費用相当額と言います。

維持管理費用相当額は、リース物件の取得のための支出でないため、現在価値基準の判定の際、及びリース資産・リース債務の計上の際に、支払リース料から控除して処理を行います。
具体的には、割引現在価値基準の判定の際、原則として支払リース料に含まれている維持管理費用相当額を控除した金額で支払リース料総額の割引現在価値を算定します。ただし、その金額が支払リース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これを支払リース料総額から控除しないことが認められています。(リース取引に関する会計基準の適用指針14項)
さらに、リース資産・リース債務を支払リース料の割引現在価値で計上する場合、当該割引現在価値を算定する際の支払リース料から維持管理費用相当額を控除したうえで、割引現在価値を算定します。こちらについても、その金額が支払リース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これを支払リース料総額から控除しないことが認められています。
また、リース資産・リース債務を貸手の現金購入価額又は借手の見積現金購入価額で計上する場合、利息相当額を算定する際に使用する支払リース料から当該維持管理費用を控除して計算利子率を算定します。こちらについても、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額から控除しないことが認められています。
リース資産・リース債務の計上額から控除された維持管理費用相当額は、リース料の支払時に、当該維持管理費用の発生時の費用として計上します。(リース取引に関する会計基準の適用指針25・40項)
リース料に保守等の役務提供相当額が含まれる場合も、維持管理費用相当額に準じて会計処理を行います。(リース取引に関する会計基準の適用指針26・41・111項)
以下では、具体例を使用して、維持管理費用相当額を控除する場合の借手における会計処理をご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例4-1】)
前提条件
B社は物件Xを下記の条件でA社からリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・解約不能リース期間3年
・借手の見積現金購入価額は25,000千円
・貸手のリース物件の購入価額は貸手において明らかでは
 ない
・リース料年額10,000千円(支払は1年ごとに後払),
 リース料総額30,000千円
・支払リース料には年額100千円の維持管理費用相当額が
 含まれることが明示されている
・リース物件の経済的耐用年数5年
・借手の減価償却方法は定額法
・借手の追加借入利子率は年8%
・借手は貸手の計算利子率を知り得ない
・リース取引開始日はX1年4月1日
・B社の決算日は3月31日
【現在価値基準による判定】
リース料総額の現在価値
(10,000千円-100千円)÷(1+0.08)+(10,000千円-100千円)÷(1+0.08)^2+(10,000千円-100千円)÷(1+0.08)^3=25,513円
※割引現在価値の算定の際は、維持管理相当額をリース料総額から控除して計算します。
リース料総額の割引現在価値25,513千円÷現金販売価額25,000千円=102%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】
解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。

経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。

所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

上記の判定結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
【B社の会計処理】
① 20X1年4月1日:リース取引開始日
借方 貸方
リース資産 25,000千円※1 リース債務 25,000千円※1
※1借手の現金購入価額
貸手の購入価額が明らかでないため、リース取引開始日のリース資産及びリース債務は借手の見積現金購入価額とリース総額の割引現在価値のいづれか低い金額で計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 7,617千円※4
支払利息 2,283千円※3
維持管理費 100千円※5
現金預金 10,000千円※2
※2支払リース料
※3支払リース料の内利息相当額。計算利子率は下記の計算
  で算定。
  (10,000千円-100千円)÷(1+r)+(10,000千円-100千
  円)÷(1+r)^2+(10,000千円-100千円)÷(1+r)^3=25,000千円
  r=9.13%
※4支払リース料10,000千円-利息相当額2,283千円-維持管理
  費用相当額100千円
※5維持管理費用相当額
支払リース料の内、維持管理費用相当額は当期の費用として計上します。維持管理相当額除いて残った支払額については利息費用及びリース債務の返済として会計処理をします。
③ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※6 減価償却累計額 8,333千円※6
※6リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
所有権移転外のため、解約不能リース期間3年、残存価額はゼロで減価償却費を算定します。
④ X3年3月31日(第2回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 8,313千円※8
支払利息 1,587千円※7
維持管理費 100千円※5
現金預金 10,000千円※2
※2支払リース料
※5維持管理費用相当額
※7支払リース料の内利息相当額(25,000千円-7,617
  千円)×9.13%
※8支払リース料10,000千円-利息相当額1,587千円-維持管理
  費用相当額100千円
1回目の支払日と同様の会計処理を行います。
⑤ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※6 減価償却累計額 8,333千円※6
※6リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
1回目の決算日と同様の会計処理を行います。
⑥ X4年3月31日(第3回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 9,070千円※8
支払利息 830千円※9
維持管理費 100千円※10
現金預金 10,000千円※2
※2支払リース料
※5維持管理費用相当額
※9支払リース料の内利息相当額(25,000千円-7,617千円-8,313
  千円)×9.13%
※10支払リース料10,000千円-利息相当額830千円-維持管理
  費用相当額100千円
2回目の支払日と同様の会計処理を行います。
⑦ X4年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,334千円※6 減価償却累計額 8,334千円※6
※6リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
2回目の決算日と同様の会計処理を行います。
⑧ X4年3月31日リース物件の返却時
借方 貸方
減価償却累計額 25,000千円※11 リース資産 25,000千円※11
※11物件Xの帳簿残高
物件Xに関するBS残高を貸借で相殺します。
上記の会計処理をすると、リース取引に関するBS残高がゼロになり、リース取引が完了します。
次のページでは、リース料に含まれる維持管理費用相当額の貸手における取り扱いをご紹介します。