ファイナンス・リース取引の中途解約の
会計処理(貸手)

Question
ファイナンス・リース取引で物件を賃貸しているのですが、借主から中途解約の申し込みがありました。この解約により違約金を受け取る予定なのですが、このような場合はどう会計処理をすればよいでしょうか?
【Answer】
ファイナンス・リース取引が中途解約され規定損害金を受け取る際は、採用している貸手の会計処理ごとに、下記の方法により会計処理を行います。
選択した会計処理 解約時の会計処理
第1法 規定損害金と中途解約時のリース投資資産又はリース債権残高との差額を収益として計上すると共に、繰延リース利益残高を全額戻入れる。

※中途解約時点でリース物件の見積り残存価額がある場合は、その価額分をリース投資資産
 又はリース債権残高から控除して計算する
第2法 規定損害金を売上高として計上し、中途解約時のリース投資資産又はリース債権の残高を売上原価として計上する。

※中途解約時点でリース物件の見積り残存価額がある場合は、その価額分をリース投資資産
 又はリース債権残高から控除して計算する
第3法 規定損害金と中途解約時のリース投資資産又はリース債権との差額を収益として計上する。

※中途解約時点でリース物件の見積り残存価額がある場合は、その価額分をリース投資資産
 又はリース債権残高から控除して計算する
所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引では、途中解約の会計処理は基本的には同一ですが、勘定科目について所有権移転の場合はリース債権を、所有権移転外の場合はリース投資資産を使用するという点で異なります。(リース取引に関する会計基準の適用指針第58・68項)
以下では、所有権移転外ファイナンス・リース取引の中途解約の会計処理を、具体例を使ってご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例1-3-(2)】)
前提条件
A社は物件Xを下記の条件でB社にリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・解約不能リース期間3年
・リース物件の購入価額は25,000千円
・リース料年額10,000千円(受取は1年ごと後払い),
 リース料総額30,000千円
・リース物件の経済的耐用年数5年
・リース取引開始日はX1年4月1日
・貸手の見積残存価額はゼロ
・B社の決算日は3月31日
【現在価値基準による判定】
(1)貸手の計算利子率
10,000千円÷(1+r)+10,000千円÷(1+r)^2+10,000千円÷(1+r)^3=25,000千円
r=9.70%

(2)リース料総額の現在価値
10,000千円÷(1+0.097)+10,000千円÷(1+0.097)^2++10,000千円÷(1+0.097)^3=25,000千円
リース料総額の割引現在価値25,000千円÷現金販売価額25,000千円=100%≧90%
【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

解約不能条件有のためノンキャンセラブルを満たします。

経済的耐用年数基準は75%未満ですが、現在価値基準が90%超のためフルペイアウトの要件を満たします。

ノンキャンセラブルとフルペイアウトの条件を満たすためファイナンス・リース取引に該当します。

所有権移転条件&割安購入選択権無し、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

本リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当します。
【貸手の会計処理(第1法)】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース投資資産 30,000千円※1
売上原価 25,000千円※2
売上高 30,000千円※1
買掛金 25,000千円※2
※1リース料総額
※2物件Xの購入価額
リース料総額を売上に計上するとともに同額をリース投資資産として計上します。また、物件Xの購入価額を売上原価に計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料回収日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※3
繰延リース
    利益繰入 2,575千円※4
リース投資資産 10,000千円※3

繰延リース利益 2,575千円※4
※3受取リース料
※4翌期以降に帰属する受取利息相当額
受取リース料をリース投資資産からマイナスします。決算の仕訳として、翌期以降に帰属する受取配当金相当額を繰延リース利益に振り替えます。
 
 
追加前提条件
・X2年3月31日にB社から当リース契約を中途解除されま
 した。
・契約に基づいてA社はB社に規定損害金20,000千円を請求し
 ます。
・解約時の物件Xの残存価額はゼロです。
③ X2年3月31日(リース契約途中解約時)
借方 貸方
現金預金 20,000千円※4
繰延リース利益 2,575千円※6
リース投資資産 20,000千円※5
繰延リース利益戻入益 2,575千円※6
※4規定損害金
※5リース投資資産残高
※6繰延リース利益残高
規定損害金とリース投資資産残高を相殺します。もしここで差額が出る場合は、当該差額は収益として計上します。また、繰延リース利益残高についても全額戻し入れ、利益として実現させます。
上記の仕訳を計上することで、リース取引に関するBS残高は全てゼロになりリース取引が完了します。
【貸手の会計処理(第2法)】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 買掛金 25,000千円※1
※1物件Xの購入価額
物件Xの購入価額でリース投資資産を計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料回収日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2
売上原価 7,575千円※3
売上高 10,000千円※2
リース投資資産 7,575千円※3
※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円から利息相当額25,000千円
  ×9.7%=2,425千円を差し引いた額
受取リース料を売上高に計上すると同時に、受取リース料から利息相当額を除いた金額をリース投資資産からマイナスします。
 
 
追加前提条件
・X2年3月31日にB社から当リース契約を中途解除されま
 した。
・契約に基づいてA社はB社に規定損害金20,000千円を請求し
 ます。
・解約時の物件Xの残存価額はゼロです。
③ X2年3月31日(リース契約途中解約時)
借方 貸方
現金預金 20,000千円※4
売上原価 17,425千円※5
売上高 20,000千円※4
リース投資資産 17,425千円※5
※4規定損害金
※5解約時点のリース投資資産残高
規定損害金を売上に計上するとともに、リース投資資産残高を売上原価に計上します。
上記の仕訳を計上することで、リース取引に関するBS残高は全てゼロになりリース取引が完了します。
【貸手の会計処理(第3法)】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 売上高 25,000千円※1
※1物件Xの購入価額
物件Xの購入価額でリース投資資産を計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料回収日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2 リース投資資産 7,575千円※3
受取利息 2,425千円※4
※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円-受取利息相当額2,425千円
※4受取利息相当額25,000千円×9.7%
受取リース料の内、利息相当額を受取利息に計上し、残りをリース投資資産からマイナスします。
 
 
追加前提条件
・X2年3月31日にB社から当リース契約を中途解除されま
 した。
・契約に基づいてA社はB社に規定損害金20,000千円を請求し
 ます。
・解約時の物件Xの残存価額はゼロです。
③ X2年3月31日(リース契約途中解約時)
借方 貸方
現金預金 20,000千円※5 リース投資資産 17,425千円※6
リース解約益 2,575千円※7
※5規定損害金
※6リース投資資産残高
※7リース解約時の規定損害棋院20,000千円とリース投資資産
  残高17,425千円の差額
規定損害金とリース投資資産を相殺し、差額をリース解約益として利益計上します。
上記の仕訳を計上することで、リース取引に関するBS残高は全てゼロになりリース取引が完了します。
次のページでは、リース料に含まれる維持管理費用相当額の借手における取り扱いをご紹介します。