リース料に含まれる維持管理費相当額等の
取り扱い(貸手)

Question
リース料の中に、固定資産税や保険料等の維持管理費用相当額が含まれている場合、貸手においてこれらはどのように会計処理したらよいでしょうか。
【Answer】
受取リース料に含まれるリース物件の固定資産税、保険料等の諸費用を維持管理費用相当額と言います。
ファイナンス・リース取引の貸手においては、こういった維持管理費用相当額は、回収時の収益又は貸手で計上している固定資産税や保険料等の実際支払額の控除額として処理します。
貸手においてのリース取引開始時におけるリース債権又はリース投資資産の計上額は、リース物件の現金購入価額などリース総額とは関係のない形で決定されます。そのため、維持管理費用相当額の調整は、貸手の計算利子率を算定する際にベースとする受取リース料総額から控除する形で行います。
また、現在価値基準の判定においても、維持管理費用相当額は原則として受取リース料総額から控除します。
ただし、維持管理費用相当額や役務提供相当額の金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、これをリース料総額から控除せず会計処理することが認められています。
維持管理費用相当額と同様に、リース料に保守等の役務提供相当額が含まれる場合も、維持管理費用相当額に準じて会計処理を行います。

ただし、通常の保守津の役務提供相当額部分については、貸手の収益として計上します。(リース取引に関する会計基準の適用指針
54・55・64・65項)
以下では、具体例を使用して、維持管理費用相当額を控除する場合の貸手における会計処理をご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例4-2】)
前提条件
A社は物件Xを下記の条件でB社へリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・解約不能リース期間3年
・物件Xの購入価額は25,000千円
・リース料年額10,000千円(受取は1年ごとに後払),
 リース料総額30,000千円
・受取リース料には年額100千円の維持管理費用相当額が
 含まれる
・リース物件の経済的耐用年数5年
・貸手における物件Xの見積り残存価額はゼロ
・リース取引開始日はX1年4月1日
・A社の決算日は3月31日
【現在価値基準による判定】
(1)貸手の計算利子率の算定
(10,000千円-100千円)÷(1+r)+(10,000千円-100千円)÷(1+r)^2+(10,000千円-100千円)÷(1+r)^3=25,000千円
r=9.13%
※維持管理相当額をリース料総額から控除して計算します。

(2)リース料総額の現在価値
(10,000千円-100千円)÷(1+0.0913)+(10,000千円-100千円)÷(1+0.0913)^2+(10,000千円-100千円)÷(1+0.0913)^3=25,000千円

リース料総額の割引現在価値25,000千円÷現金販売価額25,000千円=100%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】
解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。

経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。

所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

上記の判定結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 買掛金 25,000千円※1
※1物件Xの購入価額
リース物件の購入額をリース投資資産として計上し、買掛金を計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2

売上原価 7,617千円※5
売上高 9,900千円※3
売上高 100千円※4
リース投資資産 7,617千円※5
※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円から、維持管理費用相当額100
  千円を差し引いた金額
※4維持管理費用相当額
※5受取リース料10,000千円から受取利息相当額(25,000千円
  ×9.13%=2,283千円)と維持管理費用相当額100千円を控除
  した金額
受取リース料の内、維持管理費用相当額は当期の収益として売上計上します。維持管理費用を貸手の実費からマイナスする方法を選択する場合は、この維持管理費用相当額は当該実費の該当する費用項目でマイナス計上します。維持管理相当額除いて残った受取額についても同様に当期の収益として売上計上します。

それに対して売上原価としては、受取リース料総額から維持管理費用相当額と利息相当額を控除した金額を計上します。その相手勘定としてリース投資資産を減額します。
③ X3年3月31日(第2回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2

売上原価 8,313千円※6
売上高 9,900千円※3
売上高 100千円※4
リース投資資産 8,313千円※6

※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円から、維持管理費用相当額100
  千円を差し引いた金額
※4維持管理費用相当額
※6受取リース料10,000千円から、利息相当額((25,000
  千円-7,617千円)×9.13%=1,587千円)を差し引いた額
第1回目のリース料受取時と同様の会計処理を行います。
④ X4年3月31日(第3回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2

売上原価 9,070千円※7
売上高 9,900千円※3
売上高 100千円※4
リース投資資産 9,070千円※7
※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円から、維持管理費用相当額100
  千円を差し引いた金額
※4維持管理費用相当額
※7受取リース料10,000千円から、利息相当額((25,000
  千円-7,617千円-8,313千円)×9.13%=830千円)を差し
  引いた額
第2回目のリース料受取時と同様の会計処理を行います。
最終リース料受取日の処理が完了すると、リース投資資産残高はゼロとなり、リース取引が完了します。
次のページでは、ファイナンス・リース取引でリース料が前払の場合の借手における取り扱いをご紹介します。