ファイナンス・リース取引でリース料が
前払の場合の取り扱い(借手)

Question
ファイナンス・リース取引に該当するリース取引で、リース料を前払するケースの借手の会計処理はどのようになしたらいいでしょうか?
【Answer】
リース料を前払いするケースのファイナンス・リース取引では、リース取引開始日と同時に第1回目のリース料支払日が到来します。
そのため、借手においてはリース取引開始日にリース資産・リース債務を計上すると同時に、支払リース料でリース債務の一部を返済する仕訳を計上します。
また、支払リース料が同額であっても、後払ではなく前払にすることで、借手にとっては資金の時間価値分の負担が増加することになります。
この負担の増加分は、現在価値基準及びリース資産・リース債務の計上額の基礎となるリース料総額の割引現在価値、さらには利息相当額を計算する際の計算利子率の算定の際に、計算に加味して会計処理を行います。
以下では、具体例を使用して、ファイナンス・リース取引でリース料が前払の場合の借手の会計処理をご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例1-4-(1)】)
前提条件
B社は物件Xを下記の条件でA社からリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・解約不能リース期間3年
・借手の見積り現金購入価額は25,000千円
・貸手のリース物件の購入価額は貸手において明らか
 ではない
・リース料年額10,000千円(支払は1年ごとに前払),
 リース料総額30,000千円
・リース物件の経済的耐用年数5年
・借手の減価償却方法は定額法
・借手の追加借入利子率は年8%
・借手は貸手の計算利子率を知り得ない
・リース取引開始日はX1年4月1日
・B社の決算日は3月31日
【現在価値基準による判定】
リース料総額の現在価値
10,000千円+10,000千円÷(1+0.08)+10,000千円÷(1+0.08)^2=27,833千円

リース料総額の割引現在価値27,833千円÷現金販売価額25,000千円=111%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】
解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。

経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。

所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

上記の判定結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
【B社の会計処理】
① X1年4月1日(リース取引開始日&第1回リース料支払日)
借方 貸方
リース資産 25,000千円※1
リース債務 10,000千円※2
リース債務 25,000千円※1
現金預金 10,000千円※2
※1B社の見積現金購入価額
※2支払リース料
B社は貸手であるA社での物件Xの購入価額を知り得ないため、B社での見積現金購入価額25,000千円とリース総額の割引現在価値27,833千円の内、小さいほうである見積現金購入価額25,000千円でリース資産とリース債務を計上します。
同時に、第1回リース料支払いの仕訳として、支払リース料全額をリース債務からマイナスします。
② X2年3月31日(第2回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 6,771千円※4
支払利息 3,229千円※3
現金預金 10,000千円※2
※2支払いリース料
※3リース債務残高(25,000千円-10,000千円)×計算利子率
  21.53%
  計算利子率は下記の計算で算定で算定
  10,000千円+10,000千円÷(1+r)+10,000千円
  ÷(1+r)^2=25,000千円
  r=21.53%
※4支払リース料10,000千円-利息相当額3,229千円
支払ったリース料の内、利息相当額を支払利息として費用計上し、残確を返済分としてリース債務残高をマイナスします。利息相当額を計算する際の利子率は、リース料総総額の現在価値が、リース資産債務計上額である25,000千円と一致するように逆算して計算します。
③ X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※5 減価償却累計額 8,333千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
リース資産の減価償却費を計上します。所有権移転外ファイナンス・リース取引であるため、残存価格はゼロとし、物件Xの経済的耐用年数の5年ではなく解約不能リース期間の3年で償却を行います。
④ X3年3月31日(第3回リース料支払日)
借方 貸方
リース債務 8,229千円※7
支払利息 1,771千円※6
現金預金 10,000千円※2
※2支払リース料
※6期首リース債務残高(25,000千円‐10,000千円‐6,771
  千円)×21.53%
※7支払リース料10,000千円-利息相当額1,771千円
第2回のリース料支払日と同様に会計処理を行います。
⑤ X3年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,333千円※5 減価償却累計額 8,333千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
第1回の決算日と同様に会計処理を行います。
⑥ X4年3月31日(決算日)
借方 貸方
減価償却費 8,334千円※5 減価償却累計額 8,334千円※5
※5リース資産計上額25,000千円÷解約不能リース期間3年
第2回の決算日と同様に会計処理を行います。
上記の会計処理を継続した結果、B社におけるリース取引に関連するBS残高は下記のようになります。
リース債務:0千円
リース資産:25,000千円
リース資産の減価償却累計額:25,000千円
⑦ X4年3月31日リース物件の返却時
借方 貸方
減価償却累計額 25,000※10 リース資産 25,000※10
※10物件Xの帳簿残高
リース物件の返却時には、資産計上したリース資産と減価償却累計額を相殺する形で仕訳処理を行います。この処理により、リース取引に関連するBS残高はゼロになり、リース取引が完了します。
次のページでは、ファイナンス・リース取引でリース料が前払の場合の貸手における取り扱いをご紹介します。