セール・アンド・リースバック取引の
会計処理(貸手)

Question
物件を購入し、同物件をその物件の売主にリースする場合の会計処理はどのようにしたらいいでしょうか?
【Answer】
所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引をセール・アンド・リースバック取引といいます。

借手は、所有していた固定資産は使用し続けることになりますので、貸手にとって当該取引の実態は、資金を貸し付けて、リース料という形で債権を回収する取引であるといえます。
貸手ではリース物件の購入取引と当該リース物件の貸出というリース取引の2つの会計処理を行います。当該リース取引に関する会計処理は、通常のリース取引と何ら変わりはありません。(リース取引に関する会計基準の適用指針【設例7】)
セール・アンド・リースバック取引がファイナンス・リース取引に該当するかの判定についても、基本的には通常のリース取引と同様です。

ただし、リース物件が中古資産であるという前提がありますので、経済的耐用年数については、リースバック時におけるリース物件の性能、企画、陳腐化の状況等を考慮して見積もった経済的使用可能予測期間を用います。

また、リース債務又はリース投資資産及び売上原価の計上額の根拠となるリース物件の取得価額は、借手からの実際購入価額となります。(リース取引に関する会計基準の適用指針69項)
セール・アンド・リースバック取引におけるリース取引がオペレーティング・リース取引と判定された場合は、通常の売却取引と賃貸借取引として会計処理を行います。
以下では、具体例を使用してファイナンス・リース取引に該当する場合のセール・アンド・リースバック取引の貸手の会計処理をご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例7-2】)
前提条件
A社は以下の条件で、B社所有の物件Xを購入し、その全部をリースバックする契約を締結しました
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・当該物件は特別仕様では無い
・B社からの物件Xの購入価額は25,000千円
・リースバック取引開始日はX1年4月1日
・解約不能のリース期間3年
・リース料は年額10,000千円を後払い、
 リース料総額は30,000千円
・A社の計算利子率は9.7%
・A社における物件Xの見積り残存価額はゼロ
・リースバック時以降の経済的耐用年数は5年
・A社の決算日は3月31日
・会計処理の方法は適用指針第 51 項の第2法を採用する
【現在価値基準による判定】
(リース料総額の現在価値)
10,000千円÷(1+0.097) +10,000千円÷(1+0.097) ^2+10,000千円÷(1+0.097) ^3=25,000千円
現在価値25,000千円÷実際売却価額25,000千円=100%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】

解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。

経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。

所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

上記の結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
① X1年4月1日:リース取引開始日
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 現金預金 25,000千円※1
※1物件XのB社からの購入価額
リース取引開始時には、B社からの購入価額でリース投資資産の計上を行います。
② X2年3月31日:第1回リース料受取日&決算日
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2
売上原価 7,575千円※3
売上高 10,000千円※2
リース投資資産 7,575千円※3
※2受取リース料
※3受取リース料から利息相当額(25,000千円×9.7%)を
  控除した金額
貸手における通常のリース取引と同様の会計処理を行います。

上記のリース料受取の仕訳をリース料の最終受取日が帰属する会計期間の決算日迄継続すると、リース投資資産がゼロになり、リース取引が完了します。
次のページでは、転リース取引の会計処理をご紹介します。