転リース取引の会計処理

Question
リース物件の所有者からリースを受け、当該物件を概ね同一の条件で第3者にリースしました。この場合の会計処理方法を教えてください。
【Answer】
リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第3者にリースする取引を転リース取引といいます。
借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する場合、貸借対照表上は、リース取引の相手先が異なるため、リース債務とリース債権又はリース投資資産の双方を計上することになります。
ただし、損益計算書上では、一連の取引を一つの取引と捉え、借手としての支払利息や貸手としての売上高と売上原価などは計上せず、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を転リース差益などの名称で計上します。
なお、リース債権又はリース投資資産とリース債務は利息当額控除後の金額で計上することを原則とされていますが、転リース取引においては、利息相当額控除前の金額で計上することが出来ます。(リース取引に関する会計基準の適用指針47項)
リース債権又はリース投資資産とリース債務を利息相当額控除前の金額で計上する場合、貸借対照表に含まれる当該リース債権又はリース投資資産とリース債務の金額を注記しなければなりません。(リース取引に関する会計基準の適用指針73項)
以下では、具体例を使用してファイナンス・リース取引に該当する場合の転リース取引の会計処理をご紹介します。(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例6】)
前提条件
B社は下記の条件で、A社から物件Xを賃借し、同時にC社に転貸する転リース取引を実施しています。
【A社からの賃借】
・解約不能のリース期間3年
・B社の見積現金購入価額25,000千円(Aの購入価額は明らか
 ではない)
・リース料は年額10,000千円を後払い、
 リース料総額は30,000千円
・リース物件の経済的耐用年数は5年
・減価償却方法は定額法
・B社の利息相当額を算定する利子率は9.70%と算定された

【C社への転貸】
・解約不能のリース期間3年
・リース料は年額11,000千円を後払い、
 リース料総額は33,000千円
・B社における物件Xの見積もり残存価額はゼロである

【その他】
・A社からの賃借及びC社への転貸はともに所有権移転外
 ファイナンス・リース取引に該当
・本転リース取引における利息相当額の各期への配分は、
 利息法によっている
・リース取引開始日はX1年4月1日、B社の決算日は3月31日
① X1年4月1日:リース取引開始日&第1回リース料支払日
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 リース債務 25,000千円※1
※1 B社の見積現金購入価額
リース取引開始時には、リースの借手としてのリース債務と、貸手としてのリース投資資産をどちらもB社の見積現金購入価額で計上します。
② X2年3月31日:第1回リース料支払&回収日
借方 貸方
リース債務 7,575千円※3
預り金 2,425千円※2
現金預金 11,000千円※4
現金預金 10,000千円※1

転リース差益 1,000千円※5
預り金 2,425※6
リース投資資産 7,575千円※7
※1 A社への支払リース料
※2 A社へ支払の内、利息相当額(リース債務残高25,000千円
  ×9.70%)
※3 A社へ支払の内、元本返済相当額(支払リース料10,000
  千円-利息相当額2,425千円)
※4 C社からの受取リース料
※5 B社の転リースによる手数料収入(受取リース料11,000
  千円-支払リース料10,000千円)
※6 C社からの受取リース料の内、A社への支払利息相当額
※7 C社からの受取リース料の内、A社への利息相当額と
  転リース差益を控除した残高
リース料の支払&受取日には、通常のリース取引と同様にリース債務の返済とリース投資資産というリース債権の回収の仕訳を計上します。ただし、借手としての支払利息や貸手としての売上と売上原価等は計上せず、支払リース料と受取リース料の差額を転リース取引として計上します。リース料に含まれる利息相当額は、支払・受取いずれも預り金として計上し、互いを相殺処理します。
  
上記の仕訳をリース料の最終支払日が帰属する会計期間の決算日迄継続すると、リース債務、リース投資資産の残高がゼロになり、リース取引が完了します。
次のページでは、リース取引の重要性の判断における転リースの取り扱いについてご紹介します。