残価保証があるファイナンス・リース取引の
会計処理(貸手)

Question
所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当するリース取引で、リース期間終了時のリース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合は、借手からその不足額の支払いを受けることが契約上で定められています。このような場合の会計処理はどのようにしたらいいでしょうか?
【Answer】
リース期間終了時に、リース物件の処分価額が契約上取り決めた 保証価額に満たない場合に借手に対して、その不足額を貸手に支払う義務が課せられることがあります。このような条件を、『残価保証』といいます。
所有権移転外ファイナンス・リース取引で残価保証がある場合、現在価値基準の判定並びにリース投資資産・債権の計上に使用する割引現在価値、利息相当額の計算に使用する利子率の算定の際に、当該残価保証部分の金額を加算して会計処理します。

貸手においては、第三者によって保証がなされた部分についても、保証額をリース料総額に含めて計算します。(リース取引に関する会計基準の適用指針第15・17・52・62項)
以下では、具体例を使用して、残価保証のあるファイナンス・リース取引の貸手の会計処理をご紹介します(参考:リース取引に関する会計基準の適用指針【設例3-2】)
前提条件
A社は物件Xを下記の条件でB社へリースする契約を締結しました。
・所有権移転条項無し
・割安購入選択権無し
・リース物件は特別仕様ではない
・リース期間終了時にB社がリース物件の処分価額を1,000
 千円まで保証する条項が付されている
・解約不能リース期間3年
・物件Xの購入価額は25,000千円
・リース料年額10,000千円(受取は1年ごとに後払),
 リース料総額30,000千円
・リース物件の経済的耐用年数5年
・リース取引開始日はX1年4月1日
・A社の決算日は3月31日
・A社はファイナンス・リース取引の会計処理の第2法を採用
 している
・リース取引終了時に物件Xは700千円で処分された
【現在価値基準による判定】
(1)貸手の計算利子率の算定
10,000千円÷(1+r)+10,000千円÷(1+r)^2+10,000千円÷(1+r)^3+1000千円÷(1+r)^3=25,000千円
r=11.38%

(2)リース料総額の現在価値
10,000千円÷(1+0.1138)+10,000千円÷(1+0.1138)^2+10,000千円÷(1+0.1138)^3+1000千円÷(1+0.1138)^3=25,000千円

リース料総額の割引現在価値25,000千円÷現金販売価額25,000千円=100%≧90%

【経済的耐用年数基準による判定】
リース期間3年÷経済的耐用年数5年=60%<75%

【リース取引の判定結果】
解約不能条件有のため、ノンキャンセラブルの要件を満たします。

経済的耐用年数基準では75%に満たないため要件を満たしませんが、現在価値基準が90%のためフルペイアウトの要件を満たします。

所有権移転条件、割安購入権なく、リース物件は特別仕様ではないため所有権移転外に該当します。

上記の判定結果により、当リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(リース取引開始日)
借方 貸方
リース投資資産 25,000千円※1 買掛金 25,000千円※1
※1物件Xの購入価額
物件Xの購入価額でリース投資資産を計上します。
② X2年3月31日(第1回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2
売上原価 7,155千円※3
売上高 10,000千円※2
リース投資資産 7,155千円※3
※2受取リース料
※3受取リース料10,000千円から受取利息相当額(25,000千円
  ×11.38%=2,845千円)を控除した金額
通常のリース取引と同様の会計処理を行います。
③ X3年3月31日(第2回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2
売上原価 7,969千円※4
売上高 10,000千円※2
リース投資資産 7,969千円※4
※2受取リース料
※4受取リース料10,000千円から受取利息相当額((25,000千円
  -7,155千円)×11.38%=2,031千円)を控除した金額
第1回目回収日と同様の会計処理を行います。
④ X4年3月31日(第3回リース料受取日&決算日)
借方 貸方
現金預金 10,000千円※2
売上原価 8,876千円※5
売上高 10,000千円※2
リース投資資産 8,876千円※5
※2受取リース料
※5受取リース料10,000千円から受取利息相当額((25,000
  千円-7,155千円-7,969千円)×11.38%=1,124千円)を控除
  した金額
第2回目回収日と同様の会計処理を行います。
⑤ X4年3月31日(リース物件の返却時)
借方 貸方
貯蔵品 1,000千円※6
売上原価 1,000千円※6
売上高 1,000千円※6
リース投資資産 1,000千円※6
※6物件Xの残価保証価額
残価保証額で売上高、貯蔵品、売上原価を計上し、売上原価の相手勘定でリース投資資産をマイナスします。
⑥ X4年3月31日(リース物件の処分額確定時)
借方 貸方
貯蔵品売却損 300千円※8
売掛金 700円※7
売掛金 300千円※8
貯蔵品 1,000千円※6

貯蔵品売却損 300※7
※6物件Xの残価保証価額
※7物件Xの実際処分価額
※8物件Xの残価保証額と実際処分価額の差額
リース物件の処分価額700千円について売り先に対して売掛金として計上すると同時に、残価保証額1,000千円との差額300千円を借手に請求するため、貸し手に対する売掛金として計上します。
上記の会計処理を終了すると、リース取引に係るBS残高は売掛金のみになり、この売掛金を回収することでリース取引が完了します。
次のページでは、販売を主たる事業としている企業からリースする場合の会計処理をご紹介します。