返還されないことが賃借契約において明示されている敷金の賃借人における会計処理

【賃借契約において返還されないことが明示されている敷金の会計処理】

■預入時
 預入額を『長期前払費用』等に計上


■預入期間中
 賃借期間にわたって定額法で償却
 ⇒償却額は『支払手数料』等の勘定科目で
  費用計上
預入れた敷金の内、賃借契約において返還されないことが明示されている部分については、賃借期間にわたって定額法で償却します。

預託時においては返還が予定されている敷金と同様に取得原価で資産計上しますが、勘定科目については『敷金』勘定ではなく『長期前払費用』勘定等を使用します。

各期における償却額は、『支払手数料』等の勘定科目を使用して、費用計上します。 【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第133・309項
下記では、賃借契約において返還されないことが明示されている敷金の賃借人における会計処理を、具体例を使ってご紹介します。
前提条件
A社はテナントとして入居するビルの敷金について下記の取引を行った
・X1年4月1日に入居し、敷金1,000千円を支払った
・支払った敷金の内300千円は賃借契約において返還されな
 いことが明示されている
・それ以外の敷金は解約時に返還が見込まれる
・賃貸借契約期間はX1年4月1日~X4年3月31日である
・A社の決算日は3月31日である
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(敷金預入時)
借方 貸方
敷金 700千円※3
長期前払費用 300千円※2
現金預金 1,000千円※1
※1敷金預入額
※2契約により返還が予定されない敷金
※3返還が見込まれる敷金
預入れた敷金の内、賃貸借契約により返還が予定されない部分については長期前払費用に計上し、残額については敷金勘定に計上します。
② X2年3月31日(決算時)
借方 貸方
支払手数料 100千円※4 長期前払費用 100千円※4
※4契約により返還が予定されない敷金額300千円
  ÷賃貸借契約期間3年×当期期間1年
契約により返還が予定されない敷金額を賃貸借契約期間で配分し、当期分を支払手数料に振替えます。

以降の決算日においても同様の会計処理を行います。
次のページでは、原状回復義務への充当により最終的に回収が見込めない敷金の会計処理について具体的にご紹介します。