資産除去債務を合理的に見積もれない場合とは

資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、それを計上せず、合理的に見積ることができるようになった時点で、初めて負債として計上します。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準5項)
資産除去債務を合理的に見積ることができない場合とは、決算日現在、入手可能な全ての証拠を勘案し、最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいいます。(資産除去債務に関する会計基準の適用指針2項)
ただし、そのようなケースは、実務上では非常に限定的です。
なぜなら、たとえ資産除去債務の履行時期や除去の方法が未定であり、資産除去債務の額が確定しない場合でも、履行時期や除却費用を合理的に見積るための情報が入手可能なときは、除去費用を合理的に見積ることができないとは認められず、資産除去債務を計上しなければならないからです。
例えば、履行時期と支出予定額にいくつかの選択肢があり、それぞれの発生確率が推定可能である場合は、期待値による合理的な見積もりが可能であると判定されます。(資産除去債務に関する会計基準の適用指針17項)
資産除去債務を合理的に見積もることが出来ない場合は、重要性が乏しい場合を除き「資産除去債務の概要」及び「合理的に見積もることが出来ない旨及びその理由」の注記が必要となります。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準16項(5))
下記は、資産除去債務を合理的に見積もることが出来ない場合の注記例です。(参考:資産除去債務に関する会計基準の適用指針〔設例8〕)
【合理的に見積もれない場合の注記例】
当社は、店舗物件の不動産賃借契約に基づき、店舗の退去時における原状回復に 係る債務を有しているが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、将来店舗 を移転する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積ることができない。そのため、 当該債務に見合う資産除去債務を計上していない。
次のページでは、資産除去債務の算定方法について、詳しくご紹介します。