資産除去債務の対象となる費用とは

企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準3項では、資産除去債務計上の対象となる費用は有形固定資産の除去に係るものと定義されています。
そのため、有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕は資産除去債務の対象とはなりません。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準24項)
これらの支出は、有形固定資産の使用開始前から将来の支出が予想される、という点では除去に係る支出と同じ性質を持ちます。しかし、操業停止や対象資産の途中廃棄をした場合には不要となるという点で資産除去債務とは異なり、修繕引当金などの引当金計上を検討する対象となります。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準25項)
また、同基準において、資産除去債務は有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じるものであると定義されています。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準3項)
そのため、有形固定資産の使用を終了する前後において、当該資産の除去の方針を発表したり、有資除却を実施することにより、法律上の義務又はそれに準ずるものである除去費用の発生の可能性が高くなった場合については、有形固定資産を取得した時点や通常の使用を行っている時点で発生したものでないため、資産除去債務の対象外となります。

このような将来支出については、減損会計基準の適用や引当金計上を検討する対象となります。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準27項)
さらに、除去時の支出であっても、除去に直接要するものでないものは、資産除去債務の対象とはなりません。例えば、賃貸借物件の返却時のクリーニング費用や引っ越し費用は、資産を除去するための支出ではないため、資産除去債務の対象とはならず、支出時の費用として計上されます。
ただし、有形固定資産自体の除去費用でない場合でも、資産除去債務の対象となる支出が2つあります。
1つ目は、有形固定資産に有害物質が使用されており、有形固定資産を除去する際に当該有害物質を除去することが法律等により義務付けられている場合の、有害物質の除去費用です。
たとえ有形固定資産自体には除去する義務が無い場合でも、このような支出は資産除去債務計上の対象となります。
なお、この場合には当該有形固定資産本体の除去費用は資産除去債務の計上の対象とならず、対象となるのはあくまで有害物質の除去に直接関わる費用のみです。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準29項)
2つ目は、有形固定資産の除去の際の、間接的な支出です。具体的には、処分に至るまでの保管や管理のための費用が挙げられます。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準6項(1))
それに対して、法人税等の影響額については、資産除去債務の対象としないとされています。(資産除去債務に関する会計基準の適用指針4項)
また、原子力発電設備解体金引当金など、特別な法令等により有形固定資産の除去に係るサービスの費用を当該有形固定資産の使用に応じて各期間に適切に費用計上する方法があるケースであっても、当該費用が会計基準に照らして資産除去債務に該当する場合は、資産除去債務の計上の対象となります。


そのため、資産除去債務の負債計上と、これに対する除去費用を関連する有形固定資産の帳簿価額に加算する会計処理を行わなればなりません。

ただし、費用計上方法については、使用に応じて各期に計上する方法などが当該特別な法令等に定められている場合は、その費用計上方法を用いることができます。 (資産除去債務に関する会計基準の適用指針8・26項)
資産除去債務の対象となる 資産除去債務の対象とならない

法律等で義務付けられた有害物質の除去費用

処分に至るまでの支出(保管管理費用など)

特別な法令等によ配分計上が定められた除去費用
(ただし、費用計上方法は当該法令等に定められた方法を採用できる)

環境修復費用
修繕
退去時のクリーニング
費用
引っ越し費用
法人税等の影響額
有形固定資産の使用を終了する前後において発生したもの
次のページでは、資産除去債務の対象となる“通常の使用”についてご紹介します。