賃借契約における敷金の取り扱い
Question |
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賃借建物等に係る原状回復義務があり、敷金が資産計上されている場合は簡便的な方法で除去費用を処理できるということなのですが、具体的な方法を教えてください。 |
【Answer】
資産除去債務の会計処理と敷金の会計処理は、本来個別に行われる必要があります。しかし、建物等の賃借契約において敷金を支出している場合、両者を個別に行ってしまうと資産除去債務に対応する金額が固定資産へ計上されるとともに、敷金についても資産計上されてしまい、二重に資産が計上されてしまします。
そのため、賃借契約において、返却時に内部造作等の除去などの原状回復義務が契約で定められている場合で、その契約に対して敷金が資産計上されている場合には、除去費用を資産除去債務と有形固定資産に計上するという原則の方法ではなく、簡便的な方法で処理することが認められています。
そのため、賃借契約において、返却時に内部造作等の除去などの原状回復義務が契約で定められている場合で、その契約に対して敷金が資産計上されている場合には、除去費用を資産除去債務と有形固定資産に計上するという原則の方法ではなく、簡便的な方法で処理することが認められています。
簡便的な方法では、契約時に敷金を一旦全額資産計上し、その敷金の内、回収が見込めないと認められる金額について、平均的な入居期間などの合理的な償却期間で、各期に費用計上し、その反対勘定で資産計上した敷金を減額します。
簡便法の場合は時間価値は考慮せず、回収が見込めないと認められる金額を、各期で均等に費用計上します。
【根拠資料】
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第133・309項
資産除去債務に関する会計基準の適用指針第9・27項・〔設例6〕
会計制度委員会報告第14号金融商品会計に関する実務指針第133・309項
資産除去債務に関する会計基準の適用指針第9・27項・〔設例6〕
敷金の会計処理の総論については、下記のページをご参照ください。
敷金(賃借人側)
敷金(賃借人側)
下記では、敷金においての簡便法の具体的な会計処理をご説明します。
【根拠資料】
資産除去債務に関する会計基準の適用指針〔設例6〕
資産除去債務に関する会計基準の適用指針〔設例6〕
前提条件 |
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A社は20X1年4月1日からX建物の賃貸借契約を締結し賃借した。
・A社はX建物返還時の原状回復義務を負う ・20X1年4月1日に敷金1,000千円を支払った ・敷金の内、原状回復に充てる費用は300千円と見積もら れた ・A社の過去実績から同種の建物の平均的な入居期間は3年 |
①20X1年4月1日:敷金の支払の仕訳
借方 | 貸方 |
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敷金1,000千円※1 | 現金預金1,000千円※1 |
※1支払敷金総額
支払った敷金の総額を全額資産計上します。
②20X2年3月31日:原状回復費用の償却
借方 | 貸方 |
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敷金の償却100千円※2 | 敷金100千円※2 |
※2 原状回復費用の見積り額300千円÷平均入居期間3年
資産計上した敷金の内、原状回復費用に充てられると見込まれる金額を見積り入居期間で除して費用として計上します。
以降も同様の仕訳を継続します。
次のページでは、自発的な計画により除去が必要になった場合の取り扱いについてご紹介します。