資産除去債務が使用の都度発生する場合

Question
有形固定資産の使用に応じて汚染が発生し、将来の原状回復のための除去の支出が生じる場合の資産除去債務の計上はどのようにすればよいですか?
【Answer】
有形固定資産の使用の都度資産除去債務が発生する場合の取り扱いについては2つの方法が認められています。
1つ目は、資産除去債務を発生した各期において、それぞれ資産除去債務と関連する有形固定資産に計上し、有形固定資産の残存耐用年数にわたり減価償却し、各期に費用配分する方法です。
2つ目は、発生した除去費用を資産除去債務と関連する有形固定資産の両方に計上するものの、その費用配分は減価償却によらず、計上した年度と同一時期にその計上額と同額を費用処理する方法です。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準8項)
1つ目の方法の場合、資産除去債務の見積もりの変更と同様の会計処理行います。そのため、実務上の処理が煩雑になってしまいます。また、除去費用に係る費用配分が有形固定資産の使用期間の後半に偏ってしまうという特徴があります。(企業会計基準第18号
資産除去債務に関する会計基準47項)
以下では、2つ目の発生した除去費用を資産除去債務と関連する有形固定資産の両方に計上するものの、その費用配分は減価償却によらず、計上した年度と同一時期にその計上額と同額を費用処理する方法についての具体例をご紹介します。(参考:資産除去債務に関する会計基準の適用指針〔設例4〕)
前提条件
A社は20X1/4/1に設備Xを5,000千円で取得し使用を開始した。
・設備Xの耐用年数は3年
 (残存価格0千円で定額法により償却)
・A社には当該設備を使用後に除去する法的義務がある
・A社が当該設備を除去するときの支出は、1,000千円と見積
 もられている
・除去費用1,000千円の内300千円は毎期10分の1(100千円)
 ずつ発生する
・A社の決算日は3月31日
 ※この例題では簡便化のため、時間価値は考慮しない
①20X1年4月1日:設備X取得時の仕訳
借方 貸方
有形固定資産
   (設備X)5,700千円※3
現金預金5,000千円※2
資産除去債務 700千円※1
※1除去費用総額1,000千円-毎期発生分300千円=700千円(購入時に発生する除去費用)
※2設備Xの購入価額
※3設備Xの購入価額5,000千円+資産除去債務計上額700千円
②20X2年3月31日:設備X減価償却費の計上
借方 貸方
減価償却費1,900千円※4 減価償却累計額 1,900千円※4
※4 設備Xの固定資産計上額5,700千円/3年
③20X2年3月31日:毎期の使用の都度発生する
         資産除去債務の計上
借方 貸方
有形固定資産100千円※5
減価償却費100千円※5
資産除去債務100千円※5
減価償却累計額100千円※5
※5 使用の都度発生する資産除去債務の当期発生額
使用の都度発生する資産除去債務額を資産除去債務及び有形固定資産に計上するとともに、同額を減価償却費に計上して費用化します。以降も同様の仕訳を継続します。
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