自社利用目的のソフトウェアの定額法による減価償却の具体例

自社利用のソフトウェアについては、その利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却方法を採用すべきであるとされています。

そのため、合理的な根拠があれば、見込み販売収益に基づく方法など利用の実態に応じて減価償却方法を採用することができます。

しかしながら、一般的には自社利用のソフトウェアは市場販売目的のソフトウェアに比べて収益との直接的な対応関係が希薄な場合が多く、さらに、物理的な劣化を伴わない無形固定資産であることから、定額法による償却が合理的であるとされており、実務上では定額法を使用することがほとんどです。
ソフトウェアの減価償却方法についての詳細は、下記のページをご参照下さい。
自社利用目的のソフトウェアの減価償却方法
定額法を採用する場合の耐用年数については、原則として5年以内とされています。

5年を超える年数とすることも可能ですが、その場合は合理的な根拠を要求されます。
自社利用のソフトウェアの利用可能期間の見積りは、様々な要因に影響を受けるものであり、それぞれの見積り時点では最善の見積もりであっても、時の経過に伴う新たな要因の発生により変更することが予想されます。

そのため、利用可能期間については、適宜見直しを行わなければなりません。

利用可能期間の見直しの結果、耐用年数を変更した場合には、以降は変更後の残存耐用年数で減価償却費を算定します。(研究開発費等に係る会計基準四の5・(注5)
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針
第21・45・46項
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A-Q23)
下記では、資産計上した自社利用目的のソフトウェアを定額法で減価償却する方法について、具体例を使用してご紹介します。(参考:会計制度委員会報告第12号研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針【設例6】)
前提条件
A社はX1年4月1日に自社利用目的でソフトウェアYを購入し無形固定資産として計上した。

・ソフトウェアの取得価額は12,000千円
・取得時におけるソフトウェアの見込み利用可能期間は5年
・償却方法は定額法を採用
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(ソフトウェア取得時)
借方 貸方
ソフトウェア 12,000千円※1 現金 12,000千円※1
※1ソフトウェアYの取得価額
ソフトウェアYを取得価額で無形固定資産のソフトウェア勘定で資産計上します。
② X2年3月31日(第1回決算日)
借方 貸方
減価償却費 2,400千円※2 減価償却累計額 2,400千円※2
※2ソフトウェアYの取得価額12,000千円÷取得時の見込み利用可能期間5年
ソフトウェアYの減価償却費を計上します。当期の償却額は取得時に見積られた見込み利用可能期間5年を使用して算定します。
③ X3年3月31日(第2回決算日)
借方 貸方
減価償却費 2,400千円※3 減価償却累計額 2,400千円※3
※3ソフトウェアYの未償却残高(12,000千円-2,400千円)÷残存耐用年数4年
ソフトウェアYの未償却残高を残存耐用年数で割って当期の減価償却費を算定します。
追加前提条件
第2回決算期末にソフトウェアYの利用可能期間の見直しを行ったところ、残存利用可能期間が2年であることが明らかとなった。
④ X4年3月31日(第3回決算日)
借方 貸方
減価償却費 3,600千円※4 減価償却累計額 3,600千円※4
※4ソフトウェアYの未償却残高(12,000千円-2,400千円-2,400千円)÷残存耐用年数2年
第2回決算日と同様に減価償却費を計上します。ただし、残存耐用年数については見積変更後の2年を使用して計算します。
⑤ X5年3月31日(第4回決算日)
借方 貸方
減価償却費 3,600千円※5 減価償却累計額 3,600千円※5
※5ソフトウェアYの未償却残高(12,000千円-2,400千円-2,400千円-3,600千円)÷残存耐用年数1年
第3回決算日と同様に減価償却費を計上します。当該仕訳を計上すると、ソフトウェアYの未償却残高はゼロになり、償却が完了します。
次のページでは、自社利用目的のソフトウェアの表示について具体的にご紹介します。