通常の販売目的で保有する棚卸資産に関する表示

通常の販売目的で保有する棚卸資産は、BS上、流動資産の区分の中で下記の名称を付した科目で計上します。

もしも、各項目に属する資産の中で別建てで表示することが適切であると判断できるものばある場合は、個別に独立した科目で掲載することができます。

反対に、これらの科目を一括して『棚卸資産』の科目で表示することも可能です。この場合は、棚卸資産に一括表示した資産の科目及び金額を注記しなければなりません。
【通常の販売目的で保有する棚卸資産のBS表示】

原則:流動資産の区分の中で、下記の名称を
   付した科目で表示
   ●商品及び製品(半製品を含む)
   ●仕掛品
   ●原材料及び貯蔵品
   ※個別に別建てで表示することが適切
    であるものが含まれている場合は、
    独立した科目で掲載OK!

例外:『棚卸資産』の科目で一括表示 
    ※棚卸資産に含まれる科目と金額を
     要注記
(財務諸表等規則第15・17条)
期末の収益性低下に伴う簿価切り下げ額(戻入方式を採用している場合は、戻入額相殺後の額)については、PL上、売上原価とするケース、製造原価とするケース、特別損失とするケースの3つのケースがあります。

通常の販売目的で保有する棚卸資産に関する評価減は、販売活動を行う上で不可避に発生するものであるため、通常は、売上原価に計上します。

ただし、原材料など、製造に関連して不可避に発生すると認められるものについては、製造原価として処理します。

この場合であっても、簿価の切り下げ額に重要性がない場合は、製造原価ではなく売上原価に一括して計上することができます。

また、収益性の低下が臨時の事象により発生し、かつ、多額である場合は、特別損失に計上します。このケースにおける臨時の事象としては、重要な事業部の廃止や、災害損失の発生などが挙げられます。
ケース 棚卸資産の簿価切り下げ額のPL計上区分

販売活動を行う上で不可避に発生する評価減

売上原価

製造活動を行う上で不可避に発生する評価減

製造原価

収益性の低下が臨時の事象により発生し、かつ、多額である場合
例)重要な事業部の廃止、災害損失の発生によるもの

特別損失
ただし、収益性の低下に基づく簿価の切り下げは、毎期経常的に判定して実施するものでありますので、帳簿価額よりも著しく下落している場合であっても、それだけの理由では営業外費用又は、特別損失に計上することはできません。

また、簿価切り下げ額は販売促進に起因するものも存在することが想定されますが、販売促進費に計上することを容認してしまうと、販売促進費として処理すべきものでないものが販売費として計上されてしまう恐れがあるため、販売促進費への計上は認められていません。

さらに、評価額について洗い替法を採用する場合、前期に計上した評価減の戻入と今期の計上額を別のPL項目としてしまうと、両者が両建て計上されてしまいます。そのため、洗い替法を採用している場合は、両者を同じ区分に計上しなければなりません。
【棚卸資産の簿価切り下げ額のPL計上における留意点】

●帳簿価額よりも著しく下落しているだけで
 は営業外費用又は、特別損失に計上するこ
 とはできない

●販売費に計上することはできない

●洗い替法を採用している場合は、戻入と繰
 入を同じ区分に計上しなければならない
(棚卸資産の評価に関する会計基準第17・62・63・64・65項
棚卸資産の評価に関する会計基準の会計基準案(平成18年7月5日公表)』に
対するコメント『製造に不可避に発生する場合』)
棚卸資産の評価減についてPLに計上した場合、売上原価等の内訳項目として表示する方法、もしくは、評価減の金額を注記する方法のどちらかで、評価減の金額を独立掲載しなければなりません。

ただし、評価減の金額の重要性が乏しい場合は、この限りではありません。
【棚卸資産の簿価切り下げ額の独立掲載】

下記のいずれかの方法により評価減の金額を独立掲載しなければならない。

方法①:売上原価等の内訳項目として
    表示する

方法②:評価減の金額を注記する

※ただし、評価減の金額に重要性が乏しい
 場合は不要
(棚卸資産の評価に関する会計基準第18項)
次のページでは、通常の販売目的で保有する棚卸資産に関する注記について具体的にご紹介します。