開発事業等支出金の期末評価
Question |
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当社は不動産開発業を営んでおり、期末日時点で開発事業等支出金を棚卸資産として計上しています。通常の販売目的で保有する棚卸資産については、期末日に正味売却価額との比較により、収益性の低下の判定と必要に応じた簿価の切り下げを行わなければならないということですが、開発事業等支出金の場合は、正味売却価額はどのように見積もったらよいでしょか? |
【Answer】
通常の販売目的で保有する棚卸資産は、期末日において正味売却価額での評価を行い、帳簿価額が正味外客価額を下回っている場合、正味売却価額まで簿価を切り下げる処理を行います。
開発事業等支出金についても、同様に期末における正味売却価額での評価を行います。開発事業等支出金における正味売却価額は、完成後の販売見込額から、造成・建築工事原価の今後発生見込額と販売経費等の見込額を控除して算定します。
開発事業等支出金についても、同様に期末における正味売却価額での評価を行います。開発事業等支出金における正味売却価額は、完成後の販売見込額から、造成・建築工事原価の今後発生見込額と販売経費等の見込額を控除して算定します。
【開発事業等支出金の正味売却価額】
開発事業等支出金の正味売却価額
=完成後販売見込額-(造成・建築工事原価今後
発生見込額+販売経費等見込額)
開発事業等支出金の正味売却価額
=完成後販売見込額-(造成・建築工事原価今後
発生見込額+販売経費等見込額)
(棚卸資産の評価に関する会計基準第7・36・37項
販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い第1・2(1)(2)項)
販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い第1・2(1)(2)項)
開発事業等支出金の対象となるものには、造成計画のある未造成土地(造成中のものを含む)、住宅・ビルディング等の建築計画のある土地(建築中のものを含む)などがあります。
ただし、いずれの場合も、計画が実現可能な物件に限ります。開発計画の実現可能性が認められない場合は、そのプロジェクトによる開発利益は認められないため、当該プロジェクトには保有している不動産を処分することでしか投資を回収することができません。
そのため、実現可能性が認められないプロジェクトへの開発時用等支出金は、販売用不動産の評価基準により期末評価を行います。販売用不動産の期末評価については、下記のページをご参照ください。
販売用不動産の期末評価
ただし、いずれの場合も、計画が実現可能な物件に限ります。開発計画の実現可能性が認められない場合は、そのプロジェクトによる開発利益は認められないため、当該プロジェクトには保有している不動産を処分することでしか投資を回収することができません。
そのため、実現可能性が認められないプロジェクトへの開発時用等支出金は、販売用不動産の評価基準により期末評価を行います。販売用不動産の期末評価については、下記のページをご参照ください。
販売用不動産の期末評価
特に、下記のような事象が生じている場合には、プロジェクトの実現可能性についての検討を行う必要があるとされています。
【開発プロジェクトの実現可能性の検討が必要なケース】
●開発事業を取り巻く経済環境の変化により
開発利益が見込めない
●官公庁による転用許可・開発許可が得られ
ない
●買収及び造成・建築等の開発資金不足
●開発予定地域の重要な地区に地主の反対が
ある
●埋蔵文化財の発見により調査が必要と
なった
●開発工事に伴う近隣対策が必要となった
●開発事業を取り巻く経済環境の変化により
開発利益が見込めない
●官公庁による転用許可・開発許可が得られ
ない
●買収及び造成・建築等の開発資金不足
●開発予定地域の重要な地区に地主の反対が
ある
●埋蔵文化財の発見により調査が必要と
なった
●開発工事に伴う近隣対策が必要となった
また、下記のような状況の場合は原則として、開発計画の実現可能性は無いと判断されます。
【開発計画の実現可能性は無いと判断されるケース】
●開発用地の買収未了のため、着工予定から
おおむね5年を経過している
●開発用地の買収後おおむね5年を経過しても
着工していない
●着工済みではあるが、途中中断しおおむね2
年が経過している
●開発用地の買収未了のため、着工予定から
おおむね5年を経過している
●開発用地の買収後おおむね5年を経過しても
着工していない
●着工済みではあるが、途中中断しおおむね2
年が経過している
正味売却価額の計算で登場する『完成後販売見込額』については、販売公表価格又は販売予定価格がある場合は、その販売公表価格又は販売予定価格を使用します。
ただし、これらの価格で販売できる見込みが乏しい場合は、販売可能見込額を使用します。
販売可能見込額としては、「不動産鑑定評価基準」に基づいて自社で算定した合理的な見積額、不動産鑑定士による鑑定評価額、公示価格、都道府県基準地価格から批准した価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額を基にした倍率方式による相続税評価額、近隣の取引事例から比準した価格、収益還元価額などを使用することが考えられます。
具体的には、不動産の種類によって、下記のような評価額を使用するとされています。
ただし、これらの価格で販売できる見込みが乏しい場合は、販売可能見込額を使用します。
販売可能見込額としては、「不動産鑑定評価基準」に基づいて自社で算定した合理的な見積額、不動産鑑定士による鑑定評価額、公示価格、都道府県基準地価格から批准した価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額を基にした倍率方式による相続税評価額、近隣の取引事例から比準した価格、収益還元価額などを使用することが考えられます。
具体的には、不動産の種類によって、下記のような評価額を使用するとされています。
開発事業等支出金の種類 | 評価額 |
---|---|
造成計画のある未造成土地(造成中のものを含む) |
【造成計画が実現可能な場合】 開発事業等支出金の正味売却価額 =完成後販売見込額-(造成・建 築工事原価今後発生見 込 額+販売経費等見込額) 【造成計画が実現可能でないと判断された場合】 ①「不動産鑑定評価基準」に 基づいて算定した価額 ②都道府県基準地価格 ③公示価格 ④近隣の取引事例から比準し た価格 ⑤固定資産税評価額を基にし た倍率方式による相続税 評価額 |
住宅・ビルディング等の建築計画のある土地(建築中のものを含む) |
【造成計画が実現可能な場合】 開発事業等支出金の正味売却価額 =完成後販売見込額-(造成・建 築工事原価今後発生見 込額+販売経費等見込額) 【造成計画が実現可能でないと判断された場合】 ①「不動産鑑定評価基準」に 基づいて算定した価額 ②都道府県基準地価格から比 準した価格 ③公示価格から比準した価 ④路線価による相続税評価額 ⑤固定資産税評価額を基にし た倍率方式による相続税 評価額 ⑥近隣の取引事例から比準し た価格 |
造成・建築工事原価の今後発生見込額は、 過去の実績や工事の難易度、工法等を加味して見積もります。
【造成・建築工事原価今後発生見込額の参考情報】
●過去の工事実績
●工事の難易度
●工法当
●過去の工事実績
●工事の難易度
●工法当
販売経費等の見込額としては、販売手数料、広告宣伝費、土壌汚染対策費等が挙げられます。
【販売経費等の見込額の具体例】
●販売手数料
●広告宣伝費
●土壌汚染対策費等
●販売手数料
●広告宣伝費
●土壌汚染対策費等
(販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い第2(3)(4)・3(2)・4項・付録1-2)
開発事業等支出金は個々の資産によりその性格が異なるため、正味売却価額は個別物件ごとに適切であると考えられる算定方法を選択して算定します
開発事業等支出金の期末評価の算定方法の選択単位=個々の資産ごと
そこで選択した算定方法は、評価のための前提条件に変更がない限り前年度と同一の方法を継続して適用しなければなりません。ただし、状況が変化していない場合であっても、より正確な評価額を得るために不動産鑑定士による過程を依頼した等、合理的な理由がある場合には、当該変更は妥当なものだと認められます。
【開発事業等支出金の期末評価の変更について】
原則:一度選択した方法を継続適用
例外:下記の場合は変更可能
①開発事業等支出金の状況が変化して
いる場合
②より正確な評価額を求めるための変
更である場合
原則:一度選択した方法を継続適用
例外:下記の場合は変更可能
①開発事業等支出金の状況が変化して
いる場合
②より正確な評価額を求めるための変
更である場合
(販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い第5(1)(2)項)
開発事業等支出金の評価に使用する正味売却価額は、原則としては他の通常の販売目的で保有する棚卸資産と同様に、期末における価額を用いらなければなりません。
ただし不動産の場合、販売可能見込額として使用する公示価格などの公表は年間1回であることなどから、厳密に期末日時点の評価額ではないものの、評価時点から価格に重要な変動を及ぼす要因が認められない場合は、公表時の価格を使用することが認められます。
ただし不動産の場合、販売可能見込額として使用する公示価格などの公表は年間1回であることなどから、厳密に期末日時点の評価額ではないものの、評価時点から価格に重要な変動を及ぼす要因が認められない場合は、公表時の価格を使用することが認められます。
【開発事業等支出金の評価時点】
原則:期末における評価額を使用
例外:評価時点から価格に重要な変動がない
場合は、期末前の公示価格を使用可能
原則:期末における評価額を使用
例外:評価時点から価格に重要な変動がない
場合は、期末前の公示価格を使用可能
(販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い第5(3)項)
次のページでは、販売用不動産から賃貸事業用不動産又は自社使用目的の不動産への変更の会計処理について具体的にご紹介します。