当座借越の会計処理(一勘定制)

【当座預金の2種類の仕訳計上方法】

①一勘定制
 常に『当座預金』等の同一の勘定科目で
 当座預金を計上

②二勘定制
 当座預金残高がプラスの場合  
  ⇒『当座預金』勘定等に計上

 当座預金残高がマイナスの場合 
  ⇒『当座借越』勘定等に計上
当座預金の会計処理方法には、一勘定制と二勘定制の2種類が有ります。

一勘定制は、当座預金がプラス残高でもマイナス残高(当座借越)でも、『当座預金』等の1つの勘定科目を使用して仕訳を計上します。

それに対して二勘定制は、当座預金がプラス残高の場合は『当座預金』等の勘定科目で、マイナス残高の場合は『当座借越』等の勘定科目で、区別して仕訳を計上します。
【一勘定制の具体的な会計処理】

■当座残高がマイナスとなった場合

 マイナスとなった場合であっても、
 当座預金勘定で計上。

 ≪仕訳イメージ≫
 (買掛金)XXX (当座預金)XXX

■当座残高のマイナスが解消された場合

 マイナスが解消された場合も、
 当座預金勘定で計上。
 
 ≪仕訳イメージ≫
 (当座預金)XXX (売掛金)XXX

■期末時点で当座残高がマイナスの場合

 マイナス残高を当座預金勘定から
 短期借入金勘定へ振替
 
 ≪仕訳イメージ≫
 (当座預金)XXX (短期借入金)XXX
一勘定制を採用している場合、期中においては、当座預金残高がプラスの場合も、マイナスであり当座借越となっている場合も、『当座預金』等の一つの勘定科目で当座預金及び当座借越残高を記帳します。

つまり、当座預金に残高がある場合は『当座預金』等の勘定が借方残高となり、当座借越となっている場合は『当座預金』等の勘定が貸方残高となります。

当座借越は短期の借入金に該当するため、貸借対照表上は『短期借入金』とすべきです。

そのため、期末に当座借越となっている(=当座預金勘定が貸方残となっている)場合は、『当座預金』等の勘定から『短期借入金』等の勘定に振替える仕訳を計上します。
【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金21当座借越となった(過振り)/預金22当座借越を売上代金で補充した/預金34当座預金の期末残高が借越しの時』株式会社清文社
下記では、一勘定制を採用している場合の当座借越の会計処理について、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-預金21当座借越となった(過振り)/預金22当座借越を売上代金で補充した/預金34当座預金の期末残高が借越しの時』株式会社清文社
前提条件
A社は金融機関BのX口座の当座預金について下記の取引を行った。

・X1年4月1日の当座預金残高は0千円であった
・X1年4月2日に買掛金15,000千円を小切手を振出て
 支払った
・X2年1月30日に 売掛金の回収代金10,000千円が入金された
・X口座については、貸越限度額100,000千円の当座貸越契約
 を締結している
・A社は当座預金の会計処理方法に一勘定制を適用している
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月2日(当座借越発生時)
借方 貸方
買掛金 15,000千円※1 当座預金 15,000千円※1
※1小切手で支払った買掛金金額
振出した小切手を全額当座預金勘定からマイナスします。その結果、15,000千円の当座借越となり、当座預金は15,000千円マイナス残高、当座預金勘定は15,000千円の貸方残高となります。
② X2年1月30日(当座借越一部返済時)
借方 貸方
当座預金 10,000千円※2 売掛金 10,000千円※2
※2売掛金代金回収金額
売掛金による入金額を当座預金勘定に計上します。その結果、入金分だけの当座借越が解消され、当座借越残高は5,000千円となります。
③ X2年3月31日(決算時表示の組替)
借方 貸方
当座預金 5,000千円※3 短期借入金 5,000千円※3
※4期末当座借越残高
決算日に当座借越となっている残高については、貸借対照表上の計上科目である『短期借入金』に振替えます。
次のページでは、当座借越の会計処理(二勘定制)について具体的にご紹介します。