令和元年7月7日以前に契約した医療保険
(終身保障&有期払込)の支払保険料の会計処理

【払込保険料の会計処理】




契約者 被保険者 保険金の
受取人
支払保険料の会計処理
法人 役員
使用人
法人 払込保険料の内、損金算入額のみを保険料等で損金計上。

払込額との差額は、前払保険料等に計上。
役員
使用人
(普遍的加入である)
役員
使用人
の遺族
払込保険料の内、損金算入額のみを福利厚生費等で損金計上。

払込額との差額は、前払費用等に計上。
役員
使用人
(普遍的加入でない)
役員
使用人
の遺族
被保険者の給与となる

※役員報酬の場合は定期同額給与
法人が自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者として、令和元年7月7日以前に契約した医療保険(保険期間終了に際して保険金が支給されないもの)の内、終身保障タイプで、かつ、保険料が有期払込の契約の支払保険料の会計処理は、被保険者となる対象者の範囲と、保険金又は給付金の受取人が誰かにより異なります。
保険金又は給付金の受取人が法人である場合、払込保険料の内『平成13年8月10日 課審4-100 法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)』で規定されている損金計上額までを、保険料等で損金計上し、残額は積立保険料として前払保険料等で資産計上します。
保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合、払込保険料の内、同じく上記の規定に基づいて算定した損金計上額までを、福利厚生費等で損金計上し、残額は積立保険料として前払費用等で資産計上します。

ただし、保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合で、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合は、払込保険料は、当該役員又は使用人に対する給与となります。

このとき、被保険者が役員で、法人が負担する保険料が毎月おおむね一定である場合は、定期同額給与となります。

特定の役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者とした加入でないことを『普遍的加入』といいます。

普遍的加入の詳細な要件については、下記のページをご参照下さい。
保険契約における普遍的加入とは
【各期間の保険料損金算入額・資産計上額の算定方法】
対象期間 会計処理

保険料払込期間中

■損金計上額
 =払込保険料
 ×保険料払込期間
 ÷(105
 -加入時の被保険者年齢)

■資産計上額
 =払込保険料-損金計上額

≪仕訳例≫
(保険料)xxx (現金預金)xxx
(前払保険料)xxx

保険料払込期間満了後

■損金計上額(=資産取崩額)
=払込満了時の
 資産計上累計額
 ÷(105
 -払込満了時の
  被保険者年齢)

※上記で計算される金額は
 年額のため、必要に応じて
 
 月数按分

≪仕訳例≫
(保険料)xxx 
     (前払保険料)xxx
各期における払込保険料の損金計上額の算定方法は、保険料払込期間満了までと、保険料払込期間満了後で異なります。

有期払込の場合、保険料払込期間と保険期間の経過とが対応しておらず、保険料払込期間満了までに支払う保険料の中に、前払保険料が含まれています。

終身保障の場合、その保険期間を正確に特定することはできないため、計算上では生保標準生命表の「男性106歳、女性109歳」から導き出した「105歳」を計算上の満期到達時年齢として、各期に損金計上すべき保険料を算定します。

具体的には、保険料払込期間満了までの期間においては、払込保険料に「保険料払込期間を105歳と被保険者の加入時年齢の差で除した割合」を乗じた金額を損金の額に算入し、残額は前払保険料等の勘定科目で資産計上します。

保険料払込期間満了後においては、保険料払込満了時点の資産計上額を「105歳と被保険者の払込満了時年齢の差」で除した金額を資産計上額から取崩して、損金の額に算入します。

上記で算定される保険料払込期間満了後に取り崩す保険料は年額であるため、必要に応じて月数按分しなければなりません。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第2章5⃣』税務研究会出版局
平成13年8月10日課審4-100法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)
医療保険(保険期間終了に際して保険金が支給されないもの)の支払保険料の会計処理は、『昭和54年6月8日 直審4-18 法人契約の新成人病保険の保険料の取扱いについて』で、払込の都度損金経理できるとされていました。

その後、平成13年に改正され、終身保障タイプの内、『有期払込』については上述のように、その支払保険料の一部を資産計上しなければならないというルールが新設されました。

平成13年の改正については、改正後に支払期日が到来する保険料に適用されます。

さらに、令和元年において、医療保険を含む第三分野保険の支払保険料の会計処理が一掃して改正されました。

ただし、令和元年の改正は、令和元年7月8日以降に契約した保険契約にのみ適用されます。

そのため、現存する令和元年7月7日以前に契約を開始した『終身保障タイプ・有期払込』の医療保険の保険料については、平成13年の改正で規定されていた上述の会計処理が適用されます。
上記の通り、医療保険に関する税制は、たびたび改正されており、適用される会計処理は、その医療保険を契約したタイミングや、保障タイプ、払込期間、解約返戻金の有無により異なります。

医療保険にに関する税制の改正履歴と、適用される会計処理の総まとめは、下記のページをご参照ください。
医療保険の税制の改正履歴と会計処理の総まとめ
下記では、令和元年7月7日以前に契約した医療保険(終身保障&有期払込)の払込保険料の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。 【参考文献】
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第2章5⃣(2)①イ』税務研究会出版局
前提条件
A社は全従業員に対して、下記の条件で医療保険を契約している。
・終身保障タイプである
・保険料払込期間は平成23年3月31日~令和12年3月31日
 (20年間)である
・毎年3月31日に1年分の保険料2,000千円を後払いする
・保険加入時の被保険者の年齢は、55歳であった
・保険金の受取人は法人である
【ケース1:保険金の受取人が法人】
① 平成23年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
保険料 800千円※2
前払保険料 1,200千円※3
現金預金 2,000千円※1
※1払込保険料
※2払込保険料2,000千円×保険料払込期間20年
 ÷(105歳-加入時の被保険者年齢55歳)
※3払込保険料2,000千円-当期保険料計上額800千円
払込保険料に「保険料払込期間を105歳と被保険者の加入時年齢の差で除した割合」を乗じた金額を当期の損金として計上し、残額は前払保険料として資産計上します。保険料払込満了の令和12年3月31日まで同様の会計処理を行います。その結果、令和12年3月31日時点の保険料資産計上額は【1,200千円×20年=24,000千円】となります。
② 令和13年3月31日(保険料払込満了翌年)
借方 貸方
保険料 800千円※4 前払保険料 800千円※4
※4保険料資産計上累計額24,000千円
 ÷(105-払込満了時の被保険者年齢75歳)
保険料払込満了時点の資産計上額を「105歳と被保険者の払込満了時年齢の差」で除した金額を資産計上額から取崩して、損金の額に算入します。以降、同様の会計処理を行います。
【ケース2:保険金の受取人が被保険者で普遍的加入である】
① 平成23年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
福利厚生費 800千円※2
前払費用 1,200千円※3
現金預金 2,000千円※1
※1払込保険料
※2払込保険料2,000千円
 ×保険料払込期間20年÷(105歳-加入時の被保険者年齢55歳)
※3払込保険料2,000千円-当期保険料計上額800千円
払込保険料に「保険料払込期間を105歳と被保険者の加入時年齢の差で除した割合」を乗じた金額を当期の損金として計上し、残額は前払費用として資産計上します。保険料払込満了の令和12年3月31日まで同様の会計処理を行います。その結果、令和12年3月31日時点の保険料資産計上額は【1,200千円×20年=24,000千円】となります。
② 令和13年3月31日(保険料払込満了翌年)
借方 貸方
福利厚生費 800千円※4 前払費用 800千円※4
※4保険料資産計上累計額24,000千円
 ÷(105-払込満了時の被保険者年齢75歳)
保険料払込満了時点の資産計上額を「105歳と被保険者の払込満了時年齢の差」で除した金額を資産計上額から取崩して、損金の額に算入します。以降、同様の会計処理を行います。
【ケース3:保険金の受取人が被保険者で普遍的加入でない】
① 平成23年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
給与 2,000千円※1 現金預金 2,000千円※1
※1払込保険料
払込保険料を全額、給与として費用計上します。
次のページでは、令和元年7月7日以前に契約した医療保険(終身保障&終身払込)の支払保険料の会計処理について具体的にご紹介します。