会計仙人虎の巻

生命保険の保険料の額は、保険事故の発生割合、保険料の運用益、生命保険会社の経費の額の見積もり等の予定率(基礎率)に基づいて決定されています。

実際の運用状況がこれらの予定を上回った場合、保険会社はその乖離分を契約者に分配することで調整します。

このような分配を、契約者配当といいます。

定期付終身保険の支払保険料の会計処理は、終身保険と同様に、現状では通達等で明文化されていません。

そのため、終身保険が養老保険の取扱いを踏襲するのと同様に、定期付終身保険は定期付養老保険の取扱いを踏襲します。

定期付終身保険に対して契約者配当を受取る場合、原則としてその通知を受けた日の属する事業年度の益金として計上します。

ただし、死亡時保険金受取人が法人の定期付終身保険で、保険料が定期保険部分と終身保険部分とに区分されていないものについては、資産計上している保険料の額から、契約者配当を控除することを選択適用することができます。

契約者配当金の受取方法には、4つの方式があります。

一つ目は、現金で支払われる『現金方式』です。

現金方式では、契約者配当は現金で支払われるため、現金を資産計上すると共に、原則法では相手勘定で雑収入を計上し、控除法では保険積立金をマイナスします。

現金方式の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
定期付終身保険契約の契約者配当の会計処理
(現金方式)

二つ目は、配当金を積み立て、契約終了又は契約者の請求時に受取る『積立配当方式』です。

積立額に対して、所定の利息がきます。

積立配当方式では、契約者配当を積立てた際に、配当積立金を資産計上すると共に、原則法では相手勘定で雑収入を計上し、控除法では保険積立金をマイナスします。

配当積立金の利子については、配当積立金の運用益であるため、原則法であっても控除法であっても、その通知があった日の益金の額に算入します。

積立配当方式の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
定期付終身保険契約の契約者配当の会計処理
(積立配当方式)

三つ目は、支払保険料から配当金を相殺する『相殺方式』です。

相殺方式では、契約者配当が一旦、金銭で支払われ、それを保険料として支払った場合と同様の会計処理を行います。

『相殺方式』における控除法の場合は、現金預金を相手勘定に保険積立金を減額し、それを再び払込保険料として保険積立金に計上するため、実質的には、何ら経理処理をしないのと、同じ結果になります。

相殺方式の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
定期付終身保険契約の契約者配当の会計処理
(相殺方式)

四つ目は、配当を一時払保険料として保険契約の買い増しをする『保険金買増方式』です。

相殺方式でも、契約者配当が一旦、金銭で支払われ、それを保険料として支払った場合と同様の会計処理を行います。

保険金買増方式の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
定期付終身保険契約の契約者配当の会計処理
(保険金買増方式)

【参考文献】
法人税基本通達9-3-8
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章1(6)・第1章3』一般財団法人大蔵財務協会
山本英生(2019)『「通達」から読み解く保険税務/第3章1⃣』税務研究会出版局

次ページ　定期付終身保険契約の契約者配当の会計処理(現金方式)

前ページ
　定期付終身保険の支払保険料の会計処理
(保険料が終身保険と定期保険で明確に区分されていない場合)