外貨建前払費用の会計処理

外貨建前払費用は、原則として下記のように為替処理を行います。
【外貨建前払費用の為替換算】
換算のタイミング 会計処理

支払時

金銭授受時の為替相場で資産計上

決算時

金銭授受時の為替相場のまま据え置き

対象の取引発生時

金銭授受時の為替相場で振替
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。

”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
前払費用は、将来サービスの提供を受けるための費用性資産であるため、外貨建金銭債権債務には該当しません。

そのため、外貨建金銭債権債務に対して会計基準で定められている期末及び決済時の為替相場による為替換算を行う必要はありません。

外貨建前払費用は、金銭授受時にその時点の為替相場による円換算額で資産計上し、戻し入れて費用化する際には、金銭授受時の時点の為替相場のまま、対象となるサービスの勘定に振替えられます。 (外貨建取引等会計処理基準一1
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第25・26項)
下記では、外貨建前払費用の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は不動産業を営んでおり、下記の取引を行った。

・X1年4月1日に向こう年分の保険料200千USDを支払った
・X1年4月1日の為替相場は@100円/USDであった
・X2年3月31日の為替相場は@105円/USDであった
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(保険料支払時)
借方 貸方
支払保険料 10,000千円※2
前払保険料 10,000千円※3
現金預金 20,000千円※1
※1ドル建保険料支払額200千USD×支払時の為替相場@100円
※2保険料支払額20,000千円÷24カ月(2年)
  ×12カ月(X1年4月1日~X2年3月31日)
※3保険料支払額20,000千円-支払保険料計上額10,000千円
支払った保険料は全額支払時の為替相場で円換算し、当期の期間に帰属する部分は支払保険料として費用計上し、翌期以降の期間に帰属する部分は前払費用として資産計上します。
② X2年3月31日(決算日)
前払費用は決算日の為替換算を行いません。
③ X2年4月1日(翌期首)
借方 貸方
支払保険料 10,000千円※3 前払保険料 10,000千円※3
※3前払保険料計上額
前払保険料として計上していた金額の内、当期に帰属する部分を戻し入れて、支払保険料として費用計上します。
次のページでは、前払費用に関連する会計基準を一覧でご紹介します。