外国通貨による記録

外貨建取引は、原則として、取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録します。 (外貨建取引等会計処理基準一1)
ただし、外貨建債権債務及び外国通貨の保有状況並びに決済方法等から、取引発生時に円換算することなく、外国通貨のまま記録することが合理的であると認められる場合は、当該外国通貨の額をもって記録することができます。

外国通貨により記録された外貨建取引は、各月末等一定の時点において、その時点の直物為替相場、又は、合理的な基礎に基づいて算定された一定期間の平均相場により円換算します。

『外貨建債権債務及び外国通貨の保有状況並びに決済方法等から、外国通貨のまま記録することが合理的であると認められる場合』とは、外貨建取引により獲得した外貨を、円転することなく恒常的に外貨のまま使用している場合をいいます。

具体的には、外貨建金銭債権債務を相殺したり、売上取引で獲得した外貨をそのまま輸入取引の支払に充てている場合が挙げられます。
【外貨建て取引の換算方法】

原則⇒取引発生時の為替相場で円換算


例外⇒外国通貨で記録し、各月末等一定の
   時点の直物為替相場又は一定期間の
   平均相場で円換算

   ※外貨建取引で獲得した外貨を
    恒常的に外貨のまま使用している
    場合のみ適用可
(外貨建取引等会計処理基準(注3)
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2・49項
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書三1)
外国通貨による記録を行うかは、"事業単位”で判断します。"事業単位”とは、具体的には、事業部・部門又は支店等をいいます。

ただし、外国通貨による記録の適用対象は”本邦内”の事業単位に限定されているため、国内本社からみた在外支店等、同じ国内に所在しない事業単位の記帳及び換算方法としては適用することはできません。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2・49項)
在外支店等については、会計基準で個別に定められた換算方法があるため、その定めに従って為替換算処理を行います。

在外支店等の為替換算の具体的な方法については、下記のページをご参照下さい。
在外支店の財務諸表項目の為替換算相場
在外支店の外貨建財務諸表の為替換算手順
【外国通貨による記録の適用単位&対象】

事業単位 (例:事業部・部門・支店)

※外国通貨による記録の対象は”本邦内”の事業
 単位に限定

 ⇒同じ国内に所在しない事業単位には適用
  不可
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2項)
なお、在外支店においても、現地通貨以外の外国通貨を現地通貨に転換せずに、恒常的に外貨のまま使用している場合には、当該外国通貨での記帳、つまり、現地にとっての”外国通貨による記帳”を行うことができます。

通常、在外支店における取引は、原則は円建で、例外として現地通貨で記帳するとされています。

この例外処理の中で、さらに、現地通貨以外の外国通貨を現地通貨に転換せずに、恒常的に外貨のまま使用している場合に、在外支店における”外国通貨による記帳を行うことができます。
【在外支店における外国通貨による記録】

現地通貨で記帳する例外的な方法を採用している場合で、さらに、現地通貨以外の外国通貨を現地通貨に転換せずに恒常的に外貨のまま使用している場合には、当該外国通貨により記録可

⇒各月末等一定の時点の直物為替相場又は
 一定期間の平均相場で在外支店の取引の
 記帳に採用している通貨
 (円又は現地通貨)へ
 換算
(外貨建取引等会計処理基準二
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2項)
在外子会社等においても、現地通貨での記帳が原則とされていますが、カンボジアやペルーなど、商取引において恒常的に決済に利用される通貨が現地通貨以外である場合は、当該外国通貨での記帳、つまり、現地にとっての”外国通貨による記帳”を行うことができます。

”外国通貨による記帳”を行う場合、在外子会社の外貨建個別財務諸表作成の際には、各月末等一定時点における直物為替相場又は当該取引が属する一定期間を基礎として計算された平均相場により現地通貨に換算します。

それに対して、連結財務諸表の作成又は持分法の適用に当たっては、原則通り、現地通貨に換算した個別財務諸表を円換算して作成する方法の他に、”外国通貨による記帳”をしている部分を現地通貨に換算することなく、直接、円換算することも認められています。

その際に生じる為替差額は、為替換算調整勘定に計上します。
【在外子会社における外国通貨による記録】

商取引において恒常的に決済に利用される通貨が現地通貨以外である場合、当該外国通貨により記録可

▶個別財務諸表作成時の換算
 各月末等一定の時点の直物為替相場又は
 一定期間の平均相場で現地通貨に換算


▶連結財務諸表作成時の換算
 原則:現地通貨に換算した個別財務諸表を
    円換算して作成

 例外:現地通貨に換算することなく円換
    算可
    ⇒為替差額は為替換算調整勘定に
     計上
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2・70項)
外国通貨による記録を適用する場合、通常、1つの企業の帳簿の中で、現地通貨と外国通貨での情報が混在する状態になります。

さらに、対象の事業単位の状況によっては、記録に適用する外国通貨が1つだけではなく、複数の場合もあります。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第2項)
このように、1つの企業の会計帳簿の中で多通貨での記録を行う具体的な方法としては、『多通貨会計』という記帳方法があります。

『多通貨会計』の具体的な会計処理については、会計制度委員会研究報告第5号『多通貨会計のガイドライン』が公表されています。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第49・70項)
次のページでは、多通貨会計の具体的な会計処理について紹介します。