所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理(貸手)

貸手における所有権移転ファイナンス・リース取引は、その経済的実態からリース物件の割賦販売取引、又は、リース物件の購入資金の貸付とリース物件の売却を組み合わせた取引と同等とみなされ、取引から発生する債権をリース料によって回収するとして会計処理を行います。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準13項
リース取引に関する会計基準の適用指針119・120項)
所有権移転ファイナンス・リース取引の場合、取引から発生する債権はリース料と割安購入権の行使価格で回収し、いずれも現金による回収を前提とした金融商品の性格を有するものであるため、勘定科目はリース債権で計上します。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準40項)
このように、リース債権は金融商品と考えられるため、企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」に定められた貸倒見積の対象資産となります。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準41項)
貸手の利益は、リース料総額(割安購入価格も含む)とリース物件の購入価額の差額となります。貸手は原則としてこの利益を受取利息相当額として取り扱い、貸手の計算利子率を使用した利息法によりリース期間にわたり各期へ配分します。(企業会計基準第13号リース取引に関する会計基準14項
リース取引に関する会計基準の適用指針53・61・63・125項)
ここで使用する貸手の計算利子率は、リース料総額の割引現在価値がリース取得価額と一致するように逆算して算出します。(リース取引に関する会計基準の適用指針17項)
所有権移転ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理としては、下記の3つの方法があります。
会計処理の方法 会計処理の特徴

第1法
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法

割賦販売取引に準ずる会計処理。
製造業、卸売業等を営む企業が製品又は商品を販売する手法としてリース取引を利用する場合を想定。

第2法
リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法

割賦販売取引に準ずる会計処理。
割賦販売としての性質が強い場合を想定。

第3法
売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法

貸付取引に準ずる会計処理。
金融取引の性格が強い場合を想定。
第1法~第3法のどの方法を採用するかは、リース取引の実態に応じて決定し、その後継続的に適用します。ただし、第1法と第2法は割賦販売取引と同一の会計処理であり、割賦販売取引において既に採用している方法がある場合は、リース取引においても原則としてその割賦取引で採用している方法と同一の方法を採用しなればなりません。(リース取引に関する会計基準の適用指針51・61・122・123項)
いずれの方法を採用した場合でも、利益として各期に配分される受取利息相当額は、同額となります。
それぞれの方法の会計処理の概要は下記のようになります。
 
【第1法】リース取引開始日に売上高と売上原価を
     計上する方法

① リース取引開始日
借手 貸手

(リース債権)×××※1
(売上原価)×××※2

(売上高)×××※1
(現金預金)×××※2
※1リース料総額
※2リース物件の購入価額

② リース料受取時
借手 貸手

(現金預金)×××※3

(リース債権)×××※3
※3受取リース料

③ 決算日
借手 貸手

(繰延リース利益繰入)×××※4

(繰延リース利益)×××※4
※4受取利息相当額総額の内、翌期以降の期間に帰属する部分

第1法の具体的な会計処理は下記をご参照ください。
所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理(貸手/第1法)



 
【第2法】リース料受取時に売上高と売上原価を計上
     する方法

① リース取引開始日
借手 貸手

(リース債権)×××※1

(現金預金)×××※1
※1リース物件の購入価額

② リース料受取時
借手 貸手

(現金預金)×××※2
(売上原価)×××※3

(売上高)×××※2
(リース債権)×××※3
※2受取リース料
※3受取リース料-利息相当額

第2法の具体的な会計処理は下記をご参照ください。
所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理(貸手/第2法)



 
【第3法】売上高を計上せずに利息相当額を各期へ
     配分する方法

① リース取引開始日
借手 貸手

(リース債権)×××※1

(現金預金)×××※1
※1リース物件の購入価額

② リース料受取時
借手 貸手

(現金預金)×××※2

(リース債権)×××※4
(受取利息)×××※3
※2受取リース料
※3利息相当額
※4受取リース料-利息相当額

第3法の具体的な会計処理は下記をご参照ください。
所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理(貸手/第3法)
次のページでは、所有権移転ファイナンス・リース取引貸手の会計処理の第1法について具体的にご紹介します。