令和元年7月8日以降に契約した傷害保険の支払保険料の会計処理
(保険期間が3年未満のもの)

【令和元年7月8日以降に契約した保険期間が3年未満の傷害保険の支払保険料の会計処理】




契約者 被保険者 保険金の
受取人
支払保険料の会計処理
法人 役員
使用人
法人 ■原則
保険料等で期間の経過に応じて損金算入

■短期払の特例(適用要件あり)
保険料等で全額支払日の属する事業年度に損金算入
役員
使用人
(普遍的加入である)
役員
使用人の遺族
■原則
福利厚生費等で期間の経過に応じて損金算入

■短期払の特例(適用要件あり)
福利厚生費等で全額支払日の属する事業年度に損金算入
役員
使用人
(普遍的加入でない)
役員
使用人の遺族
被保険者の給与となる

※役員報酬の場合は定期同額給与
法人が自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者として、令和元年7月8日以降に契約した傷害保険の内、保険期間が3年未満のものは、保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合に該当し、法人税法基本通達9-3-5の規定に基づいて、支払保険料を会計処理します。
ただしこの内、令和元年10月7日以前に開始した長期傷害保険契約で、解約返戻金のないもので、かつ、短期払いのものについては、旧規定の『平成18年4月28日 課審5-90 長期傷害保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて』に基づいて支払保険料を会計処理します。

旧規定での具体的な会計処理については、下記のページをご参照下さい。
令和元年7月7日以前に契約した長期傷害保険(終身保障&有期払込)の支払保険料の会計処理
令和元年7月7日以前に契約した長期傷害保険(終身保障&終身払込)の支払保険料の会計処理
法人税法基本通達9-3-5の会計処理は、被保険者となる対象者の範囲と、保険金又は給付金の受取人が誰かにより異なります。
保険金又は給付金の受取人が法人である場合、支払った保険料は、原則として保険料等で期間の経過に応じて損金の額に算入します。

ただし、後述する短期払いの特例の適用条件を満たす場合は、全額、支払日の属する事業年度に、保険料等で損金計上することができます。
保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合、支払った保険料は、原則として福利厚生費等で期間の経過に応じて損金の額に算入します。

この場合も、後述する短期払いの特例の適用条件を満たす場合は、全額、支払日の属する事業年度に、福利厚生費等で損金計上することができます。

ただし、保険金又は給付金の受取人が被保険者の遺族である場合で、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合は、支払った保険料は、当該役員又は使用人に対する給与となります。

被保険者が役員で、法人が負担する保険料が毎月おおむね一定である場合は、定期同額給与となります。

特定の役員または部課長その他特定の使用人のみを被保険者とした加入でないことを『普遍的加入』といいます。

普遍的加入の詳細な要件については、下記のページをご参照下さい。
保険契約における普遍的加入とは
傷害保険に関する税制は、たびたび改正されており、適用される会計処理は、契約した年度によって異なります。

傷害保険に関する税制の改正履歴と、適用される支払保険料の会計処理の総まとめは、下記のページをご参照ください。
傷害保険に関する税制の改正履歴と会計処理の総まとめ
【参考文献】
法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2
タックスアンサーNo.5364定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)
中村慈美・樋口翔太(2022)『企業の保険をめぐる税務/第1章1Q&A7』一般財団法人大蔵財務協会
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ[Q1]
【短期払いの場合の各期における支払保険料の損金計上額】
原則 特例
※適用要件あり

『総支払保険料÷保険期間』で算定した金額。

 例)保険期間40年、1年当り
 20万円を10年間支払

  各期の損金計上額
=20万円×10年÷40年
=5万円

支払った日の属する事業年度に損金算入
保険契約における『短期払い』とは、保険料を保険期間よりも短い期間で払い込んでしまうことをいいます。

例えば、終身保障タイプの保険料を有期支払したり、保障期間40年の保険で保険料の支払は10年間で完了する、といったケースがこれに該当します。

このような場合、保険期間と保険料支払期間が対応していないため、時の経過に伴い保険料を損金計上するためには原則として、単純に当期支払保険料ではなく、『総支払保険料÷保険期間』で算定した金額を年間の保険料として損金計上します。

ただし、下記の短期払いの特例処理の適用要件を満たす場合には、支払った日の属する事業年度に損金算入することができます。
【短期払いの特例処理の適用要件】

①令和元年10月8日以降の契約である

②その事業年度に支払った保険料総額が
 被保険者一人当り30万円以下である
 (被保険者一人当たりに2以上の該当契約が
 有る場合はその合計額で判定)

③保険期間を通じて解約返戻金相当額のない
 定期保険である
 (ごく少額の払戻金であればOK)

④保険料の払込期間が保険期間よりも短い

⑤最高返戻率が50%以下である

⑥支払った日の属する事業年度の損金の額に
 算入している

※上記全てを満たす場合のみ、特例処理を
 適用可。
要件の1つ目は、令和元年10月8日以降に開始した契約であるということです。

この特例処理は、令和元年に新設され、令和元年10月8日以降の契約にのみ適用されるため、それより前に開始した契約には適用することができません。

要件の2つ目は、その事業年度に支払った保険料総額が被保険者一人当り30万円以下であることです。

ここで留意しなければならないのは、1年分の保険料である『年換算保険料相当額』で判定されるわけではなく、あくまでもその事業年度に支払った保険料である『支払保険料総額』で、30万円以下であるかどうかが判定されるということです。

また、被保険者一人当たりに2以上の特例に該当する契約が有る場合はその合計額で判定します。

条件の3つ目は、保険期間を通じて解約返戻金相当額がないことです。ただし、ごく少額の払戻金であれば許容されます。

条件の4つ目は、保険料の払込期間が保険期間よりも短いということです。

条件の5つ目は、最高返戻率が50%以下であることです。

条件の6つ目は、支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているということです。 【参考文献】
法人税基本通達9-3-5(注)2
タックスアンサーNo.5364定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分(注3))
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ[Q1・Q2]
【傷害保険における計算上の保険期間】




定期保障 終身保障
保険契約に定められている契約日から
満了日までの期間
保険期間の開始の日から被保険者の年齢が
116歳に到達する日までの期間

『保険期間=116-加入時の被保険者年齢』
傷害保険における保険期間とは、保険契約に定めている契約日から満了日までをいいます。

ただし、保障期間が終身である場合、保険契約の満了日は未定です。

そのため、計算上は、被保険者が一定の年齢に達するまでの期間を保険期間とします。

この『一定の年齢』については、傷害保険を契約した年月日により、適用される年齢基準が異なります。

令和元年7月8日以降に契約した傷害保険については、被保険者が116歳になるまでが計算上の保険期間となります。 【参考文献】
法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(注)2
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ[Q3]
下記では、令和元年7月8日以降に契約した保険期間が3年未満の傷害保険の支払保険料の会計処理を、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は従業員に対して、下記の条件で傷害保険を契約した。
・令和2年4月1日に保険契約を開始した
・令和3年3月31日に、令和2年4月1日~令和3年3月31日分の
 保険料100千円を支払った
・保険期間は2年間である
【ケース1:保険金の受取人が法人】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
保険料 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、保険料の勘定科目で費用計上します。
【ケース2:保険金の受取人が被保険者の遺族かつ普遍的加入である】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
福利厚生費 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、福利厚生費の勘定科目で費用計上します。
【ケース3:保険金の受取人が被保険者の遺族かつ普遍的加入でない】
① 令和3年3月31日(保険料支払時)
借方 貸方
給与 100千円※1 現金預金 100千円※1
※1支払った保険料
支払った保険料は、給与の勘定科目で費用計上します。被保険者が役員の場合は、役員報酬の勘定科目を使用します。
次のページでは、令和元年7月8日以降に契約した傷害保険の支払保険料の会計処理(最高解約返戻率が50%以下のもの)について具体的にご紹介します。