外貨建子会社株式の会計処理

外貨建子会社株式は、原則として下記のように為替処理を行います。
換算のタイミング 会計処理

取得時

取得時の為替相場×取得時の外貨建価額で資産計上

決算時

帳簿価額のまま据え置き

減損損失計上時

時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合、下記の評価額まで簿価を切り下げ

評価時の為替相場×外貨建ての時価又は実質価額

⇒換算差額は当期の有価証券
 の評価損として処理
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。

”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
外貨建子会社株式は、取得時には、取得時の為替相場による円換算額をもって資産計上します。 (外貨建取引等会計処理基準一1)
外貨建子会社株式は決算時においては、原則として換算替えを行わず、取得価額で据え置きます。

子会社株式への投資は、資金運用等を目的として行われるというよりも事業目的に関連して行われる性質の取引であるため、金融商品会計基準では原則として時価評価を行わず、取得原価をもってBS計上するとされています。

この考え方を踏襲して、為替相場の変動部分についても、取得原価をもってBS計上することが適当であるとされています。 (外貨建取引等会計処理基準一2(1)(c)ハ
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第17・60項
金融商品会計基準第17項)
ただし、時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合は、外貨建ての時価又は実質価額を評価時の為替相場により換算して評価額を算定します。

子会社株式にこのような時価評価を行うには、時価又は実質価額が「著しく下落した」ことが認められることが必要です。

外貨建有価証券の場合、この「著しく下落した」かどうかは、外貨建ての時価と外貨建ての取得原価とを比較して判断します。

この場合に生じる換算差額は当期の有価証券の評価損として処理します。 (外貨建取引等会計処理基準一2(1)(c)ニ
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19・62項
金融商品会計基準第20・91項)
また、外貨建子会社株式対する受取配当金が発生した場合の会計処理については、下記のページをご参照ください。
在外子会社等の支払配当金の換算方法
下記では、外貨建外貨建子会社株式の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は、B社株式(海外企業)について、下記の取引を行った。

・X1年4月1日にB社株式を1株当り@200USDで10,000株
 (保有割合80%)取得し子会社化した
・X1年4月1日のUSDの為替相場は1USD@105円であった
・X2年3月31日のB社株式の外貨建て時価は1株当り
 @180USDであった
・X2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@103円であった
・X3年3月31日のB社株式の外貨建て時価は1株当り
 @50USDであった
・X3年3月31日のUSDの為替相場は1USD@103円であった
・X3年3月31日のB社の株価は著しく下落しており、
 今後回復の見込みはない
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(取得時)
借方 貸方
関係会社株式 210,000千円※1 現金預金 210,000千円※1
※1取得時の株当り時価@200USD×取得株数10,000株
  ×取得時の為替相場@105円
取得時の外貨建時価に取得時の為替相場を掛けた金額で、関係会社株式を資産計上します。
② X2年3月31日(決算時)
帳簿価額は取得時の円換算額で据え置くため、仕訳処理は不要。
③ X3年3月31日(減損損失計上時)
借方 貸方
関連会社株式評価損 158,500千円※2 関連会社株式 158,500千円※2
※2B社株式帳簿額210,000千円
  -B社株式決算時円建時価51,500千円
  (1株当時価@50USD×取得株数10,000株
  
  ×取得時の為替相場@103円)
B社株式の外貨建時価は、外貨建取得原価に対して50%以上下落しており、さらに回復の見込みがないため、決算時の外貨建時価を決算時の為替相場で換算した金額で評価替えを行います。評価差額は、換算差額も含めて、有価証券の評価損として計上します。
次のページでは、外貨建関連会社株式の会計処理について具体例を使用してご紹介します。