外貨建売買目的有価証券として保有している同時に募集・割り当てられた外貨建社債
と外貨建新株予約権の会計処理

現行基準上で旧商法下で行われていた分離型新株引受権付社債と同じ方法で資金調達を行うには、社債と新株予約権とを同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる方法をとります。

このケースでは、社債と新株予約権は別々に証券が発行され市場で流通するものの、その経済的実態が以前の分離型新株引受権付社債と同一である場合は、実質的に一体のものとみなされます。

そのため、そのような社債と新株予約権の保有者は、それぞれの発行価額を別々にせず合計した上で、区分法で会計処理します。

社債と新株予約権を同時に募集していない場合、又は、同時に割り当てていない場合でも、実質的に一体のものとみられる場合は、同様の会計処理をします。 (実務対応報告第1号新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱いQ3
適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第22・28項)
このような一体のものとみなされる外貨建社債及び外貨建新株予約権を売買目的有価証券として保有する場合は、原則として下記のように為替処理を行います。
換算のタイミング 会計処理

取得時

【新株予約権部分】
取得時の為替相場で資産計上

【社債部分】
取得時の為替相場で資産計上

決算時

【新株予約権部分】
決算時の為替相場で換算替
⇒換算差額は当期の有価証券
 評価損益として処理

【社債部分】
決算時の為替相場で換算替
⇒換算差額は当期の有価証券
 評価損益として処理

売却時

【新株予約権部分】
売却時の為替差額は当期の有価証券売却損益に
含めて計上

【社債部分】
売却時の為替差額は当期の有価証券売却損益に
含めて計上

権利行使時

【新株予約権部分】
権利行使する新株予約権を権利行使時の為替相場で換算替したうえで、払込金とともに取得した株式に振替
⇒換算差額は当期の有価証券
 評価損益に含めて計上
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。

”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
社債と同時発行された外貨建新株予約権の円換算については、通常の単独発行された外貨建新株予約権の会計処理を踏襲します。

具体的には、取得時には取得時の為替相場で換算した価額を帳簿価額として資産計上します。

対象が売買目的有価証券である場合、決算時には決算時の為替相場で換算替し、換算差額は有価証券の評価損益として計上します。

売買目的有価証券は、金融商品に係る会計基準において時価評価を行うこととされているため、売買目的有価証券の為替換算は、その円貨額による時価評価額を求める過程であると考えられます。

そのため、決算時の換算替えによる換算差額は、為替差損益ではなく有価証券の評価損益として処理する方法が採用されています。

また、会計基準では明文化されていませんが、売買目的有価証券の売却時に発生する換算差額についても、決算時の換算替による換算差額と同様の理由から、為替差損益ではなく有価証券の売却損益に計上します。

権利行使時には、まず権利行使時の外貨建時価を権利行使時の為替相場で換算した価額で新株予約権を評価替し、評価差額を有価証券評価損益に計上します。

そのうえで、評価後の外貨建新株予約権の帳簿価額と払込額の合計額を権利行使で取得した株式の取得価額に振替えます。 (外貨建取引等会計処理基準一2(2)
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書二1(3)
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第12・19-4・19-5・19-7・19-9項
金融商品に関する会計基準第15項)
それに対して社債部分は、通常の単独発行された外貨建社債の会計処理を踏襲します。

具体的には、取得時には取得時の為替相場で換算した価額を帳簿価額として資産計上します。

対象が売買目的有価証券である場合、外貨建新株予約権部分と同様に、決算時には決算時の為替相場で換算替し、換算差額は有価証券の評価損益として計上します。

売却時においても、外貨建新株予約権部分と同様に、発生する換算差額は為替差損益ではなく有価証券の売却損益に計上します。 (外貨建取引等会計処理基準一2(2)
外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書二1(3)
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第12・19-7項
金融商品に関する会計基準第15項)
次のページでは、外貨建売買目的有価証券として保有している外貨建新株予約権の会計処理を具体例を使用してご紹介します。