自社発行の外貨建転換社債型新株予約権付社債の会計処理
『転換社債型新株予約権付社債』は、新株予約権が付いた社債です。転換型である故に、新株予約権と社債はそれぞれ単独で存在することはできません。
転換社債の発行者は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分とに区分しない『一括法』と区分する『区分法』のいずれかを選択適用することができます。 (企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第36項
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18項)
転換社債の発行者は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分とに区分しない『一括法』と区分する『区分法』のいずれかを選択適用することができます。 (企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第36項
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18項)
外貨建転換社債型新株予約権付社債の為替処理は、会社法(平成17年法律第86号)施行の際に変更になっており、会社法施行前に発行した外貨建転換社債型新株予約権付社債については、施行前に定められていた会計処理を適用し、施行後に発行した外貨建転換社債型新株予約権付社債は、変更後の会計処理を適用します。(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-8項)
具体的には、会社法施行前後でそれぞれ下記のように為替換算の会計処理を行います。
【会社法(平成17年法律第86号)施行前に発行されている場合為替処理】
換算のタイミング | 会計処理 |
---|---|
発行時 |
発行時の為替相場 ×発行時の外貨建価額 で負債計上 |
決算時 |
帳簿価額のまま据え置き ※新株予約権権利行使期間 満了後のもの及び、 転換請 求の可能性がないと認めら れるもは、 決算時の為替相 場で換算替 |
転換時 |
発行時の為替相場 ×発行時の外貨建価額 で資本金等に振替 |
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-8・22項
実務対応報告第11号外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い)
実務対応報告第11号外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い)
【会社法(平成17年法律第86号)施行後に発行されている場合為替処理】
換算のタイミング | 会計処理 |
---|---|
発行時 |
発行時の為替相場 ×発行時の外貨建価額 で負債計上 |
決算時 |
決算時の為替相場で換算替 ⇒換算差額は当期の為替差損 益として処理 |
転換時 |
転換時の為替相場で換算替した金額で資本金等に振替 ⇒換算差額は当期の為替差損 益として処理 |
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-8項
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第25項)
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第25項)
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。
”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
下記では、自社発行の外貨建転換社債型新株予約権付社債の会社法施行前後それぞれの会計処理について、具体例を使用してご紹介します。
【会社法(平成17年法律第86号)施行前に発行されている場合の会計処理の具体例】
(参考:実務対応報告第11号外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い設例)
前提条件 |
---|
A社は、下記の様に外貨建転換社債型新株予約権付社債の取引を行った。
・X1年6月1日に額面100,000USDを100,000USDで発行した ・X1年6月1日のUSDの為替相場は1USD@100円であった ・X2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@110円であった ・X2年5月31日に全額権利行使され、新株を発行した ・X2年5月31日のUSDの為替相場は1USD@105円であった ・X2年5月31日の新株発行については全額資本金に計上する ・転換社債型新株予約権付社債の会計処理は一括法を採用 する ・A社の決算日は3月31日 |
【A社の会計処理】
① X1年6月1日(発行時)
① X1年6月1日(発行時)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 10,000千円※1 |
新株予約権付社債 10,000千円※1 |
※1外貨建発行価額100,000USD×発行時の為替相場@100円
発行価額に発行時の為替相場を掛けた金額で、新株予約権付社債を負債計上します。
② X2年3月31日(決算時)
転換の可能性のある新株予約権付社債は、発行時の円建価額で据え置くため、決算時の換算替えは行いません。
③ X2年5月31日(権利行使時)
借方 | 貸方 |
---|---|
新株予約権付社債 10,000千円※2 |
資本金 10,000千円※2 |
※2新株予約権付社債発行時の円貨建価額
権利行使された新株予約権付社債発行時の円貨建価額を資本金等に振替えます。
【会社法(平成17年法律第86号)施行後に発行されている場合の会計処理の具体例】
(参考:企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理
設例4)
設例4)
前提条件 |
---|
A社は、下記の様に外貨建転換社債型新株予約権付社債の取引を行った。
・Y1年6月1日に額面100,000USDを100,000USDで発行した ・Y1年6月1日のUSDの為替相場は1USD@100円であった ・Y2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@110円であった ・Y2年5月31日に全額権利行使され、新株を発行した ・Y2年5月31日のUSDの為替相場は1USD@105円であった ・Y2年5月31日の新株発行については全額資本金に計上する ・転換社債型新株予約権付社債の会計処理は一括法を採用 する ・A社の決算日は3月31日 |
【A社の会計処理】
① Y1年6月1日(発行時)
① Y1年6月1日(発行時)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 10,000千円※1 |
新株予約権付社債 10,000千円※1 |
※1外貨建発行価額100,000USD×発行時の為替相場@100円
発行価額に発行時の為替相場を掛けた金額で、新株予約権付社債を負債計上します。
② Y2年3月31日(決算時)
借方 | 貸方 |
---|---|
為替差損 1,000千円※2 | 新株予約権付社債 1,000千円※2 |
※2決算時の為替相場@110円×決算時の新活予約権付社債
の外貨建帳簿価額100,000USD
-決算時の新活予約権付
社債の円建帳簿価額10,000千円
の外貨建帳簿価額100,000USD
-決算時の新活予約権付
社債の円建帳簿価額10,000千円
新株予約権部分も含めて、決算時の外貨建帳簿価額を決算時の為替相場で換算替えします。換算替えによって発生した差額は、為替差損益として計上します。
③ Y2年5月31日(権利行使時)
借方 | 貸方 |
---|---|
新株予約権付社債 500千円※3
新株予約権付社債 10,500千円※4 |
為替差益 500千円※3
資本金 10,500千円※4 |
※3権利行使時の為替相場@105円×権利行使時の新活予約権
付社債の外貨建帳簿価額100,000USD
-権利行使時の
新株予約権付社債の円建帳簿価額11,000千円
※4権利行使時の為替相場@105円×権利行使時の新活予約権
付社債の外貨建帳簿価額100,000USD
付社債の外貨建帳簿価額100,000USD
-権利行使時の
新株予約権付社債の円建帳簿価額11,000千円
※4権利行使時の為替相場@105円×権利行使時の新活予約権
付社債の外貨建帳簿価額100,000USD
新株予約権付社債を一旦、権利行使時の為替相場で換算替えし換算差額を為替差損益として計上します。換算後の新株予約権付社債の円建価額を新株発行の払込金として資本計上します。
次のページでは、自社発行の外貨建新株引受権付社債の会計処理について具体的にご紹介します。