自社発行の外貨建転換社債
の会計処理
『転換社債』は、株式に転換できるオプションが付いた社債です。
その名称は、平成14年4月の商法改正で、現在では『転換社債型新株予約権付社債』に変更されています。
そのため、保有している外貨建転換社債の為替換算は、会計基準で定められてる外貨建転換社債型新株予約権付社債の会計処理と同様です。
その名称は、平成14年4月の商法改正で、現在では『転換社債型新株予約権付社債』に変更されています。
そのため、保有している外貨建転換社債の為替換算は、会計基準で定められてる外貨建転換社債型新株予約権付社債の会計処理と同様です。
ただし、外貨建転換社債型新株予約権付社債の会計処理は、会社法(平成17年法律第86号)施行の際に変更になっており、会社法施行前に発行した外貨建転換社債型新株予約権付社債については、施行前に定められていた会計処理を適用し、施行後に発行した外貨建転換社債型新株予約権付社債は、変更後の会計処理を適用します。
現在、残高として残っている『転換社債』は、平成14年4月前に発行されたものであるため、会社法施行前の、外貨建転換社債型新株予約権付社債と同様の会計処理となります。(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-8項)
現在、残高として残っている『転換社債』は、平成14年4月前に発行されたものであるため、会社法施行前の、外貨建転換社債型新株予約権付社債と同様の会計処理となります。(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-8項)
外貨建転換社は、原則として下記のように為替処理を行います。
換算のタイミング | 会計処理 |
---|---|
発行時 |
発行時の為替相場×発行時の外貨建価額で負債計上 ※条件決定日ではなく発行日 の為替相場を使用 |
決算時 |
帳簿価額のまま据え置き ※転換請求の可能性がないと 認められるもは、 決算時の 為替相場で換算替 |
転換時 |
発行時の為替相場 ×発行時の外貨建価額 で資本金等に振替 |
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。
”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
転換社債の発行者は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分とに区分しない『一括法』と区分する『区分法』のいずれかを選択適用することができます。
(企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準第36項
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18項)
企業会計基準適用指針第17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18項)
どちらを選択した場合であっても、自社発行の外貨建転換社債は、発行時には、発行時の為替相場による円換算額をもって負債計上します。
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第20項)
転換社債の発行においては、その条件決定日から発行日まで2週間以上の期間が空いてしまうため、発行時の為替相場としてどの日付の相場を使用するか迷われるかもしれませんが、会計基準では条件決定日ではなく発行日の為替相場を使用することが明示されています。
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第63項)
転換社債の発行は、潜在的株式の発行であると解釈されているため、将来の転換時に発行する株式に対する払込金額は、転換社債発行時に払い込まれた価額で固定されます。
そのため決算時においては、通常の外貨建金銭債務のような換算替はせず、発行時の為替相場による円換算額で据え置きます。
転換時においても転換社債の発行時の円建価額のまま、転換で発行した株式に対する払込金として、資本金等に計上します。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第20・22・63項)
そのため決算時においては、通常の外貨建金銭債務のような換算替はせず、発行時の為替相場による円換算額で据え置きます。
転換時においても転換社債の発行時の円建価額のまま、転換で発行した株式に対する払込金として、資本金等に計上します。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第20・22・63項)
ただし、転換請求の可能性がないと認められる場合の転換社債は、実質的に他の外貨建金銭債務と同様であると考えられるため、決算時には、決算時の為替相場で為替換算替をしなければなりません。
転換請求の可能性がないと認められる場合とは、下記のようなケースをいいます。
転換請求の可能性がないと認められる場合とは、下記のようなケースをいいます。
【転換請求の可能性がないと認められる
ケース】
・外貨ベースで転換価格が対象となる株式の
相場を大きく上回り、転換請求期限までに
過去の実績をベースに試算
できる相当な
変動があっても逆転できない状況
・決算日後、FS作成日までに転換請求期間
満了日が到来し転換が行われなかった場合
で、転換請求期間満了日の対象
の株式の
相場が決算日の相場と大差ない場合
※転換請求期間満了日の対象の株式の相場
が決算日の相場から乖離しており、その
相場変動のせいで転換が行われ
なかった
と考えられるときは、決算日において
転換請求の可能性はないと認められる
場合には該当しない
ケース】
・外貨ベースで転換価格が対象となる株式の
相場を大きく上回り、転換請求期限までに
過去の実績をベースに試算
できる相当な
変動があっても逆転できない状況
・決算日後、FS作成日までに転換請求期間
満了日が到来し転換が行われなかった場合
で、転換請求期間満了日の対象
の株式の
相場が決算日の相場と大差ない場合
※転換請求期間満了日の対象の株式の相場
が決算日の相場から乖離しており、その
相場変動のせいで転換が行われ
なかった
と考えられるときは、決算日において
転換請求の可能性はないと認められる
場合には該当しない
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第22・63・65項・設例9)
外貨建転換社債は通常、転換条件として1株当りの円価額と換算レートが設定されています。
これは、転換により発行する株式数を予め固定するための措置であり、転換条件に使用される為替相場は発行条件決定日前数日間の為替相場を考慮して決定されます。
転換請求時に発行される株式数は下記の計算式で算定します。
これは、転換により発行する株式数を予め固定するための措置であり、転換条件に使用される為替相場は発行条件決定日前数日間の為替相場を考慮して決定されます。
転換請求時に発行される株式数は下記の計算式で算定します。
【転換請求時の発行株式数の算定】
転換請求時発行株式数
=権利行使された外貨建転換社債価額
×転換条件の換算レート
÷転換条件の1株当り円価額
転換請求時発行株式数
=権利行使された外貨建転換社債価額
×転換条件の換算レート
÷転換条件の1株当り円価額
転換請求により取得した株式については、その保有目的に応じて会計処理します。
(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第63項
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例8)
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例8)
下記では、自社発行の外貨建転換社債の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。
(参考:外貨建取引等の会計処理に関する実務指針設例8)
前提条件 |
---|
A社は、下記の様に外貨建転換社債の取引を行った。
・X1年6月1日に額面100,000USDを発行した ・転換条件は1株1,000円、換算(固定)レートは110円 ・X1年6月1日のUSDの為替相場は1USD@100円であった ・X2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@103円であった ・X2年5月31日に全額転換請求があり、新株を発行した ・X2年5月31日のUSDの為替相場は1USD@105円であった ・X2年5月31日の新株発行については全額資本金に計上する ・A社の決算日は3月31日 |
【A社の会計処理】
① X1年6月1日(発行時)
① X1年6月1日(発行時)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金 10,000千円※1 | 転換社債 10,000千円※1 |
※1外貨建発行価額100,000USD×発行時の為替相場@100円
発行価額に発行時の為替相場を掛けた金額で、転換社債を負債計上します。
② X2年3月31日(決算時)
転換の可能性のある転換社債は、発行時の円建価額で据え置くため、決算時の換算替えは行いません。
③ X2年5月31日(権利行使時)
借方 | 貸方 |
---|---|
転換社債 10,000千円※2 | 資本金 10,000千円※2 |
※2転換社債発行時の円貨建価額
権利行使された転換社債発行時の円貨建価額を資本金等に振替えます。
このとき、転換により発行する株式数は、下記のように算定されます。
このとき、転換により発行する株式数は、下記のように算定されます。
発行株式数
=外貨建転換社債価額100,000USD×換算(固定)レート110円
÷転換時1株当価額@1,000円=11000株
=外貨建転換社債価額100,000USD×換算(固定)レート110円
÷転換時1株当価額@1,000円=11000株
次のページでは、自社発行の外貨建転換社債型新株予約権付社債の会計処理について具体的にご紹介します。