外貨建社債と外貨建新株予約権とを同時に募集・割り当てする場合の会計処理

現行基準上で旧商法下で行われていた分離型新株引受権付社債と同じ方法で資金調達を行うには、社債と新株予約権とを同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる方法を取ります。

このケースにおいて、社債と新株予約権は別々に証券が発行され市場で流通するものの、その経済的実態が以前の分離型新株引受権付社債と同一である場合は、実質的に一体のものとみなされます。

そのため、そのような社債と新株予約権の発行者は、それぞれの発行価額を別々にせず合計した上で、区分法を使用して会計処理します。

また、社債と新株予約権を同時に募集していない場合又は両者を同時に割り当てていない場合でも、実質的に一体のものとみられる場合についても、同様に、合計した上で区分法で計処理を行います。 (実務対応報告第1号旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱いQ3
企業会計基準適用指針第 17号払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第28項
外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-6項)
そのうえで、外貨建社債と外貨建新株予約権を同時に募集・割り当てする場合は、原則として下記のように為替処理を行います。
換算のタイミング 会計処理

発行時

【新株予約権部分】
発行時の為替相場で換算

【社債部分】
発行時の為替相場で換算

決算時

【新株予約権部分】
発行時の為替相場で据え置き

【社債部分】
決算時の為替相場で換算替
⇒換算差額は当期の
 為替差損益として処理

権利行使時

【新株予約権部分】
発行時の為替相場で資本金等へ振替
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。

”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
同時に募集・割り当てする場合の外貨建新株予約権の対価部分については、通常の単独発行された外貨建新株予約権と同様の為替処理を行います。

具体的には、発行時には発行時の為替相場で換算した金額で計上し、決算時においても発行時の為替相場で据え置きます。

新株予約権を権利行使した際にも、換算替えは行わず、発行時の為替相場のまま、新株の払込金とともに、資本金等に振替えます。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-2・19-3・19-6項)
それに対して社債部分は、発行時は新株予約権部分と同様に、発行時の為替相場で換算した金額で計上しますが、決算時には決算時の為替相場で換算替えを行います。

換算替えによって発生した評価差額については、当期の為替損益として処理します。 (外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第19-6項)
次のページでは、自社発行の外貨建新株予約権の会計処理について具体的にご紹介します。