外貨建貸付金の会計処理

外貨建貸付金は、原則として下記のように為替処理を行います。
換算のタイミング 会計処理

発生時

発生時の為替相場で資産計上

決算時

決算時の為替相場(T.T.B又はT.T.M)で換算替
⇒換算差額は当期の為替差損
 益として処理

決済時

決済時の換算差額は当期為替差損益に計上
ただし、”外国通貨による記録”を適用している外貨建取引については、上記の限りではなく、”外国通貨による記録”について定められている会計処理に従います。

”外国通貨による記録”の具体的な会計処理については、下記のページをご参照ください。
外国通貨による記録
多通貨会計とは
純粋多通貨会計と準多通貨会計
外貨建貸付金は発生時に、発生時の為替相場による円換算額をもって資産計上します。 【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準一1
外貨建貸付金は、外貨建金銭債権債務に該当します。そのため、決算時においては、決算時の為替相場で換算替を行います。 【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準一2(1)(b)・(注4)
決算時の換算替えにおいては、T.T.B(電信買相場)又は、T.T.M(電信売買相場の仲値)を用います。 【参考文献】
仰星監査法人(2023)『勘定科目別仕訳処理ハンドブック/Ⅰ流動資産-貸付金136外貨建貸付金を評価した』
株式会社清文社
決算時の換算替で生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理します。 【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準一2(2)
さらに、決済によって生じた損益についても、当期の為替差損益として処理します。 【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準一3
【外貨建貸付金に対する受取利息の
              為替処理】

受取利息発生時
⇒発生時の為替相場で収益計上

未収利息
⇒外貨建未収収益に準じて会計処理
貸付金に伴って発生する受取利息については、受取利息発生時の為替相場による円換算額で収益計上します。 【参考文献】
外貨建取引等会計処理基準一1
期末のタイミングなどで未収利息が発生する場合の取扱いは、外貨建未収収益に方法に準して会計処理します。

外貨建未収収益の具体的な会計処理のページをご参照ください。
外貨建未収収益の会計処理
下記では、外貨建貸付金の仕訳について、具体例を使用してご紹介します。
前提条件
A社は、取引先である外国法人B社に対して、下記の貸付の取引を行った。

・貸付期間はX1年4月1日~X3年3月31日
・貸付金額は1,000,000USD(外貨建)
・貸付利率は年利3%で、利息は満期による元本返済ととも
 に受け取る
・X3年3月31日に全額を一括で返済する契約であり、
 契約通りに回収している
・X1年4月1日のUSDの為替相場は1USD@100円であった
・X2年3月31日のUSDの為替相場は1USD@105円であった
・X3年3月31日のUSDの為替相場は1USD@103円であった
・A社の決算日は3月31日
【A社の会計処理】
① X1年4月1日(貸付時)
借方 貸方
貸付金 100,000千円※1 現金預金 100,000千円※1
※1貸付時の相場@100円×1,000,000USD
貸付金額を貸付時の為替相場で資産計上し、相手勘定で現金預金を減額します。
② X2年3月31日(決算日)
借方 貸方
貸付金 5,000千円※2
未収利息 3,150千円※3
為替差益 5,000千円※2
受取利息 3,150千円※3
※2貸付金外貨建期末残高1,000,000USD
  ×決算時の為替相場@105円
  -外貨建貸付金帳簿価額100,000千円
※3貸付金額1,000,000USD×利率3%
  ×決算時の為替相場@105円
貸付金の帳簿残高を決算時の為替相場に換算替えし、換算差額は為替差損益として計上します。
当期の期間に帰属する受取利息について、決算日の為替相場で収益認識し、同額を未収利息に計上します。
③ X2年4月1日(翌期首)
借方 貸方
受取利息 3,150千円※3 未収利息 3,150千円※3
※3未収利息円建前期末残高
前期末に計上していた円建未収利息残高を戻入て、相手勘定で受取利息をマイナスします。
④ X3年3月31日(満期日)
借方 貸方
現金預金 109,180千円※6
為替差損 2,000千円※7
貸付金 105,000千円※4
受取利息 6,180千円※5
※4貸付金額円建て帳簿価額105,000千円
※5貸付金額1,000,000USD×利率3%
  ×貸付期間2年×決済時の為替相場@103円
※6(外貨建貸付金額1,000,000USD+外貨建利息受取額
  60,000USD)×決済時の為替相場@103円
※7外貨建借入金額1,000,000USD×決済時の為替相場@103円
  -借入金円建帳簿価額105,000千円
貸付金の返済に伴い、貸付金の円建て帳簿価額をマイナスするとともに、利息の受取額を受取時の為替相場で受取利息計上します。
同時に相手勘定で受取った現金預金を決済日の為替相場で計上し、貸借差額を為替差損益に計上します。
次のページでは、外貨建貸付金の貸借対照表上の表示を具体的にご紹介します。